企業型DCは「役員だけ」で導入できる?中小企業の活用法と注意点

「自分たち役員の退職金を効率よく準備したい。でも、従業員全員分の掛金を会社が負担するのは厳しいので、役員だけで企業型DCを始められないだろうか?」

日々会社の成長のために奔走されている中小企業の社長様から、このようなご相談をいただくことが多くあります。将来の備えは重要ですが、会社のキャッシュフローを考えると、慎重になるのは当然のことです。

この記事では、企業型DC(確定拠出年金)を「役員だけ」で導入できるのかという結論をはじめ、会社負担を抑えながら社長の希望を叶える現実的な方法について、専門家がわかりやすく解説します。

最後までお読みいただくことで、役員の退職金準備だけでなく、従業員の定着率向上や採用力強化に繋がる「一石二鳥」の制度活用法がわかります。ぜひ、貴社のより良い会社づくりの参考にしてください。

結論から言うと、企業型DCを「役員だけ」に限定した導入はできません

社長にとって一番気になる「役員だけで企業型DCを導入できるか」という点ですが、結論から申し上げますと、原則として「役員のみ」に限定した導入はできません。

なぜなら、確定拠出年金法という法律により、加入資格に関するルールが厳格に定められているためです。

法律上「加入資格の差別」は禁止されている

企業型DCは、厚生労働省の管轄のもと、従業員の老後の資産形成を支援するために国が設けた制度です。

そのため、法律や厚生労働省のガイドラインにおいて、「特定の職種」や「役員のみ」といった、一部の人だけを優遇するような不当な差別的取り扱いは禁止されています。

会社が企業型DCを導入する場合、基本的には「厚生年金保険の被保険者」である従業員全員を対象とする必要があります。

「社長1人だけの会社」なら可能だが、従業員がいる場合は注意

例外として、「社長1人だけの会社(または役員のみの会社)」であれば、結果的に役員だけで企業型DCを導入することは可能です。

しかし、従業員を雇用している企業の場合は、原則、社会保険へ加入している従業員であれば全員対象とする必要があります。

「役員だけで導入できないなら、企業型DCは諦めるしかないのでしょうか?」

実は、会社が大きなコスト負担を抱えることなく、希望する人(役員を含む)だけが加入できる現実的な方法が存在します。次章で詳しく見ていきましょう。

「役員の退職金準備」と「コスト抑制」を両立する現実的な選択肢

「従業員全員分の掛金を負担できない」というお悩みを解決しつつ、役員の退職金準備を進めるには、主に2つのアプローチが考えられます。

会社負担を抑えつつ希望者だけが加入できる「選択制企業型DC」

もっとも現実的でおすすめなのが、「選択制企業型DC(選択制確定拠出年金)」の導入です。

これは、現在の給与の一部を「企業型DCの掛金として積み立てる」か、これまで通り「現金(給与)として受け取る」かを、役員や従業員一人ひとりが自由に選択できる仕組みです。

会社拠出の企業型DCと、選択制企業型DCの仕組み比較図

会社が新たに掛金を上乗せして拠出する必要がないため、企業の持ち出し(新たなコスト)を抑えながら、退職金制度を構築することができます。

この制度であれば、社長ご自身は掛金を拠出して退職金準備を行い、今の生活費を優先したい従業員は現金で受け取る、といった柔軟な対応が可能になります。

小規模企業共済やiDeCo(個人型DC)との使い分け・併用

もう一つの選択肢として、他の退職金準備制度を活用する方法もあります。

例えば、中小企業の経営者向けに国が用意している「小規模企業共済」は、掛金が全額所得控除になるなど、役員の退職金準備として非常に有効な手段です(※執筆時点の情報)。

また、個人で加入するiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することも考えられます。現在は法改正により、企業型DCとiDeCoの併用も要件を満たせば可能となっています。

それぞれの制度には特徴があるため、自社の状況に合わせてこれらを使い分ける、あるいは併用することが大切です。

このように、退職金を準備する選択肢は複数ありますが、実は従業員を含めた「選択制企業型DC」の導入には、単なる「コスト削減」以上に、会社を成長させる大きなメリットが隠されています。

実は「役員だけ」よりお得?従業員も巻き込んで導入する3つのメリット

従業員も対象に含めて企業型DC(選択制など)を導入することは、社長ご自身にとっても、会社全体にとっても、非常に有意義な投資となり得ます。ここでは3つの大きなメリットをご紹介します。

1. 社長自身の効率的な退職金準備(税制優遇)

企業型DCの最大の魅力は、強力な税制優遇です。

掛金は全額非課税(損金算入)となり、運用期間中の利益にも税金がかかりません。さらに、将来受け取る際にも「退職所得控除」や「公的年金等控除」が適用され、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

役員報酬からご自身で貯蓄するよりも、税制優遇をフル活用できる企業型DCを利用した方が、はるかに効率的に資産を形成することが期待できます(※税制は執筆時点のものです)。

2. 人材の定着率向上と採用力強化(福利厚生の充実)

中小企業にとって、優秀な人材の確保と定着は最重要課題です。

「退職金制度がある会社」という事実は、求職者にとって大きな安心材料となります。採用面接の際にも、企業型DCの導入をアピールすることで、他社との差別化を図ることが可能です。

また、従業員が自らの将来の資産形成について考えるきっかけを提供することは、会社への信頼感や帰属意識を高め、結果として離職防止(定着率の向上)に繋がります。

3. 会社・加入者双方の社会保険料の適正化

選択制企業型DCを導入した場合、給与の一部を「掛金」として選択した部分は、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)の算定基礎となる「標準報酬月額」から外れます。

これにより、加入者本人の社会保険料負担が軽減されるだけでなく、会社が折半して負担する社会保険料も適正化(軽減)される副次的な効果が期待できます。

💡 ポイント

  • 企業型DCは社長の効率的な退職金準備に最適
  • 「退職金制度あり」は採用や社員の定着率向上に直結する
  • 選択制DCなら社会保険料の適正化効果も期待できる

メリットが豊富な企業型DCですが、導入にあたっては気をつけるべきポイントも存在します。では、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

導入前に社長が知っておくべき留意点と「失敗パターン」

企業型DCは優れた制度ですが、「導入すればすべて解決」というわけではありません。事前に以下の留意点を把握しておくことが成功の秘訣です。

制度設計や導入手続きに手間とコストがかかる

企業型DCの導入には、専門的な手続きが伴います。

就業規則や退職金規程の改定、厚生局への申請、従業員への説明や労使合意など、クリアすべきステップが多くあります。

⚠️ 留意点

自社内だけで手続きを完結させるのは専門知識の観点から非常にハードルが高く、時間もかかります。導入時のコンサルティング費用や、毎月の管理手数料などのランニングコストも考慮しておく必要があります。

【要注意】投資教育が不足し、制度が「形骸化」するリスク

企業型DCにおける最大の「失敗パターン」は、導入後のサポート不足です。

企業型DC導入のよくある失敗パターンと、成功へのフロー図

従業員に対して「制度を作ったので、あとは自分で運用してね」と丸投げしてしまうとどうなるでしょうか。

投資の知識がない従業員は不安に感じ、結果として「元本確保型(定期預金など)」の商品ばかりを選んでしまいます。これでは、インフレ(物価上昇)によって実質的な資産価値が目減りするリスクがあり、本来の制度のメリットを活かしきれません。

せっかくコストと手間をかけて導入した福利厚生制度が、従業員に価値を感じてもらえない「形骸化した制度」になってしまうのは、会社にとって大きな損失です。

企業型DCを「価値ある制度」にするカギは導入後のサポート

では、制度を形骸化させず、従業員に「この会社で働いていてよかった」と思ってもらうためには、どうすればよいのでしょうか。

継続的な投資教育が従業員の満足度(定着率)を変える

最も重要なのは、導入時だけでなく「導入後」の継続的な投資教育です。

従業員が金融や投資に関する基礎知識を身につけ、自身のライフプランに合わせた運用ができるよう伴走することが不可欠です。定期的な勉強会の開催や、個別の疑問に答えるサポート体制があることで、従業員は安心して制度を活用でき、会社へのロイヤリティ(満足度)も大きく向上します。

制度設計からアフターフォローまで伴走する専門家へご相談を

私たちFGパートナーズは、単なる制度の導入支援にとどまりません。

「会社負担を抑えたい」「社長の退職金を準備したい」といったご要望に合わせた最適な制度設計(選択制DCなど)のご提案から、複雑な導入手続きの代行まで、すべてお任せいただけます。

そして何より、私たちの最大の強みは「継続的な投資教育と手厚いアフターフォロー」です。制度が形骸化しないよう、社長と従業員の皆様に寄り添い、プロの視点から長期的な資産形成をサポートいたします。

まとめ

企業型DCは「役員だけ」に限定して導入することはできませんが、「選択制DC」を活用することで、会社負担を抑えながら社長の退職金準備と従業員の福利厚生を両立できます。成功のカギは「導入後の投資教育」にあります。

「自社の場合はどれくらいコストがかかる?」「どれくらいの節税効果がある?」など、少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。

貴社の状況に合わせた個別のシミュレーションも無料で承っております。

企業型DCの「役員・社長の加入」に関するよくある質問(FAQ)

Q

役員の掛金上限額はいくらですか?

A

企業型DCの掛金上限額は、他の企業年金(確定給付企業年金など)がない場合、月額55,000円です。他の企業年金がある場合は他制度掛金相当額を引いた金額となります(※執筆時点の情報)。これは役員も従業員も同額です。

Q

選択制にした場合、給与(現金)を選ぶ従業員から不満が出ないか心配です。

A

選択制DCは、本人の希望で掛金拠出か現金受け取りかを選べるため、不満が出にくい仕組みです。ただし、「なぜこの制度を導入するのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」を、導入時に従業員へ丁寧に説明し、納得してもらうプロセスが非常に重要になります。

Q

すでに小規模企業共済に加入していますが、企業型DCも併用できますか?

A

はい、併用は可能です。小規模企業共済と企業型DCは別の制度ですので、それぞれの限度額の範囲内で掛金を拠出することができます。両方を活用することで、より手厚い退職金準備と税制優遇の効果が期待できます。