企業型DCとiDeCoの違いを3分で整理 | 中小企業経営者のための基礎知識

📋 この記事でわかること
- ✓ iDeCoと企業型DCの基本的な違い
- ✓ 5つの比較ポイント(加入者・掛金・上限・税優遇・手続き)
- ✓ 中小企業経営者にとってのメリット
- ✓ 自社に最適な制度の組み合わせ方
一言でいうと、iDeCoは「個人」が加入する制度、企業型DCは「会社」が制度として導入するものです。ただし、中小企業の経営者にとっては、この使い分けひとつで、税負担と老後資金の備え方が大きく変わってきます。この記事では、両者の違いを3分で整理します。
目次
まずは「一言の整理」から
詳しい違いに入る前に、最も大事なポイントを先にお伝えします。
個人の制度iDeCo
個人が自分で加入し、自分で掛金を出す制度
会社の制度企業型DC
会社が制度として導入し、社員と経営者が加入する制度
これだけ覚えていただければ、両者の違いの6割は理解したと言えます。あとの4割は、「掛金は誰が出すか」「いくらまで拠出できるか」「税優遇の効き方」といった具体論です。順に見ていきます。
5つの違いを表で整理
iDeCoと企業型DCの違いは、以下の5つの観点で整理できます。
| 比較軸 | 個人の制度iDeCo | 会社の制度企業型DC |
|---|---|---|
| ① 誰が加入するか | 個人 (自営業・会社員・公務員など) | 会社が制度として導入し、社員と経営者が加入 |
| ② 掛金を出すのは誰か | 加入者本人 | 会社 (または社員自身=選択制) |
| ③ 掛金の上限 | 働き方や他制度との併用状況により月額に上限あり | 原則として月額55,000円 (他制度との併用で変動) |
| ④ 税優遇の仕組み | 掛金が個人の所得控除になる | 会社拠出は損金算入が可能。 社員拠出(選択制)は社会保険料の算定基礎から外れる仕組み |
| ⑤ 手続き・運営 | 個人で申込・口座管理手数料が発生 | 会社が制度設計・運営管理を担当。加入者個人の手続き負担は軽い |
※ 上記は制度上の一般的な整理です。具体的な金額や効果は、加入者の状況・会社の規模・他制度との併用状況により異なります。導入をご検討の際は、専門家にご相談ください。
中小企業経営者の視点で考えると
中小企業の経営者にとって、この2つの制度はどう見えるでしょうか。
iDeCoは、個人で完結する仕組みです。経営者ご自身がiDeCoに加入するという選択は、もちろん可能です。ただ、加入者本人の所得控除という形でしか効果が及ばないため、「個人での備え」の枠を出ません。
一方、企業型DCは「会社の制度」として導入することで、経営者個人と社員の両方にメリットが及ぶ可能性があります。経営者ご自身も加入者になれるため、役員報酬の中から備えるよりも、税効率の良い形で老後資金を作る選択肢が生まれます。同時に、社員にとっては福利厚生として機能し、定着・採用にも影響しうるという面もあります。
また、企業型DCには「会社の追加負担を抑える設計」も選べる仕組み(選択制DC)があります。これは社員自身が給与の一部を拠出に回す仕組みで、会社の追加コストを抑えつつ制度を整えられるという特徴があります。
※ 選択制DCは、社員の手取り・社会保険料・将来の年金額にも影響するため、導入時には社員への丁寧な説明と同意が不可欠です。安易な節税策としてではなく、社員への説明責任も含めた制度設計が前提となります。
「使い分け」ではなく「組み合わせ」という発想
iDeCoと企業型DC、どちらが得か――この問いは、実はあまり生産的ではありません。両者は競合する制度ではなく、組み合わせて考えるべき制度だからです。
ただし、経営者の方の場合、「企業型DC + iDeCo」という組み合わせは、実務ではあまり優先順位が高くありません。
なぜなら、企業型DCに加入するとiDeCoの拠出枠が大幅に下がるうえ、企業型DCで「マッチング拠出」(社員自身も追加で掛金を出す仕組み)を採用している場合は、iDeCoとの併用ができないこともあります。さらに、iDeCoは個人口座の管理手数料が継続的に発生するため、わずかな追加枠のために手数料を払い続ける合理性は、経営者にとって薄いケースが大半です。
経営者にとっての現実的なパターン
経営者の方が「会社の制度+個人の備え」を整える場合、実務で多いのは次の組み合わせです。
小規模企業共済は、経営者が個人として加入できる退職金準備の制度で、月額最大7万円(年84万円)まで拠出でき、全額が所得控除の対象になります。流動性も高く、経営者にとっては iDeCo より優先される選択肢になることが多いのが実情です。
iDeCoが選択肢に入るケース
それでも iDeCo の併用が選択肢に入るのは、次のようなケースです。
- 社員の方が、福利厚生としての企業型DCに加えて、個人でも資産形成を進めたい場合
- 経営者が、小規模企業共済の上限まですでに拠出していて、さらに枠を広げたい場合
このように、「全員にとって iDeCo 併用が有利」というわけではなく、状況によって最適解が変わります。
どの組み合わせが自社・自分にとって最適かは、会社の規模・経営者の年齢・事業フェーズ・既存の退職金制度の有無によって変わります。一律の正解はありません。
だからこそ、「iDeCoと企業型DC、どちらにしようか」という二択で考えるよりも、「自社にとって最適な組み合わせ方は何か」を専門家と一緒に整理するほうが、結果的に良い選択にたどり着けます。
まとめ
- ✓ iDeCoは個人の制度、企業型DCは会社の制度
- ✓ 中小企業の経営者にとって、企業型DCは経営者個人と社員の両方にメリットを及ぼせる選択肢
- ✓ 「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」という発想で考えるのが現実的
自社のケースで、企業型DCをどう設計すべきかを具体的に考えたい方は、無料セミナーで詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
ここまでが「3分で整理」の本編です。ここから先は、よくいただくご質問への簡単な補足です。
小規模企業共済との違いは?
小規模企業共済は、経営者個人の退職金準備として位置づけられる制度です。企業型DCが「会社の制度」であるのに対し、小規模企業共済は「経営者本人のための制度」です。両者は併用も可能です。詳しい使い分けはセミナーでご説明します。
企業型DCと中退共は併用できる?
ケースによって異なります。中退共から企業型DCへの移行、または併用といった選択肢があります。既存制度の内容によって最適な進め方が変わるため、個別相談で具体的にお伺いするのが確実です。
既に退職金制度がある会社は、移行できる?
移行は可能ですが、既存制度の内容(退職一時金制度・中退共・確定給付企業年金など)によって進め方が異なります。移行と併用、それぞれにメリット・留意点があります。
「会社が掛金を出す型」と「選択制」の違いを詳しく知りたい
会社拠出型は、会社が掛金を出す形で福利厚生として機能させる設計です。選択制は、社員ご自身が給与の一部を拠出に回す形で、会社の追加負担を抑えつつ制度を整える選択肢になります。後者は社員への影響(手取り・社保・将来年金)があるため、導入時の説明と同意が必須です。セミナーでは両方の設計をフラットに解説します。
この記事の執筆者
北郷 拓郎 (株式会社FGパートナーズ 代表)
法政大学卒業後、国内大手証券会社にて8年勤務。富裕層・法人向けの資産運用コンサルティングに従事した後、2021年に独立。現在は中小企業向けの企業型DC設計支援を専門としています。
【免責事項】
本記事は、企業型確定拠出年金(企業型DC)に関する一般的な情報提供を目的として作成されています。本記事は2026年5月時点の法令・税制に基づきます。今後の法改正・制度変更により内容が変わる場合があります。本記事は特定の投資行動・税務処理・法的手続きを推奨するものではなく、個別の状況に応じた専門的アドバイスの提供を目的とするものではありません。実際の導入・運用にあたっては、税理士・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家へのご相談を強くお勧めします。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害・不利益についても、株式会社FGパートナーズは一切の責任を負いません。