内部留保で作る経営者の退職金はもったいない!より効率的な制度とは

会社を経営していく中で、「万が一のビジネスの備え」や「将来の自分の退職金」のために、利益を内部留保(現預金)として厚くしている経営者は非常に多くいらっしゃいます。
「現金が会社にある状態が一番安心だ」と考えるのは経営者として当然の心理であり、企業の存続においてキャッシュ・イズ・キングであることは間違いありません。
しかし、「経営者自身の効率的な退職金準備」という目的において、内部留保に頼り切るのは非常に「もったいない」と言わざるを得ません。
この記事では、なぜ内部留保で退職金を作るのがもったいないのか、その財務的・税務的な理由を解説するとともに、経営者自身の老後資金を効率よく形成するための具体的な制度について詳しく解説します。
目次
なぜ「内部留保」で退職金を準備するのはもったいないのか?
内部留保による退職金準備がもったいない最大の理由は、「税金の負担を二重に受けている」という点にあります。具体的なデメリットを3つの視点から見ていきましょう。
1. 法人税を支払った「残り」で積み立てている
内部留保は、会社の売上から経費を差し引き、残った利益に対して「法人税等(実効税率約30%)」を支払った後の、いわば「税引き後の純利益」の蓄積です。
たとえば、将来の退職金として会社に3,000万円を残したい場合、税引き後に3,000万円を残すためには、税引き前で約4,300万円ほどの利益を出す必要があります。約1,300万円もの税金を国に納めた上で残ったお金をプールしている状態であり、個人の資産形成という観点での資金効率は決して良くありません。
2. 受け取るときにも税金がかかる
会社に貯めた内部留保を、いざ「役員退職慰労金」として社長個人に支給する際、今度は社長個人に対して「所得税・住民税」がかかります。
退職所得控除などの税制優遇(勤続年数に応じた非課税枠や、1/2課税など)はあるものの、会社の利益として法人税を引かれ、さらに受け取る際にも税金が引かれるため、稼いだ利益から最終的に社長個人の手元に残る金額は大きく目減りしてしまいます。
3. お金が「働いていない」状態になっている
内部留保として会社の口座に眠っている現預金は、利息がほとんどつきません。昨今のようにインフレ(物価上昇)が起きれば、現金の額面は変わらなくても、実質的な価値は目減りしていきます。
本来であれば運用に回して増やせたはずの資金が、ただ会社にプールされているだけの状態は、大きな機会損失(本来得られたはずの利益を逃している状態)を引き起こしています。
経営者自身の効率的な退職金準備に欠かせない視点
では、どうすればこの「もったいない」状態を脱却できるのでしょうか。
重要なのは、目先の小さな節税テクニックに走るのではなく、「経営者自身がいかに効率よく将来の資産を形成するか」という本質的な目的を見据えることです。
効率の良い退職金準備には、以下の2つの視点が欠かせません。
- 全額損金で積み立てる(税引き前の利益を使う)
- 運用益が非課税になる仕組みを使う(お金に効率よく働いてもらう)
法人税を支払った後の内部留保ではなく、会社の「経費(損金)」として積み立てながら、将来の自分宛ての資産を非課税で増やしていく。これが、現代の経営者に求められるスマートな財務戦略です。
内部留保より圧倒的に有利!経営者におすすめの退職金準備制度
ここからは、内部留保に代わる「より効率的な退職金準備の制度」を具体的に紹介します。いずれも国の税制優遇を最大限に活かせる仕組みです。
1. 企業型確定拠出年金(企業型DC・選択制DC)
経営者の退職金準備として、現在最も注目されているのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。役員のみの1名法人からでも導入が可能で、経営者自身の資産形成に強力なメリットがあります。
- 掛金が全額損金になる: 会社が拠出する掛金は全額損金算入できるため、法人税の課税対象となる利益を圧縮しつつ、個人の退職金原資を積み立てられます。
- 運用益が非課税: 通常、投資信託などの運用で得た利益には約20%の税金がかかりますが、DC制度内での運用益はすべて非課税で再投資されます。長期運用による複利効果を最大限に活かせます。
- 会社の資産と切り離される: 万が一、会社が倒産などの危機に陥っても、企業型DCで積み立てた資産は外部の信託銀行等で保全されているため、経営者個人の老後資金として確実に守られます。
【※導入時の重要な注意点※】
企業型DCは税制面で非常に優れた制度ですが、コストをかけずに手取りを増やせるわけではありません。導入にあたっては、制度設計や厚生局への申請にかかる「初期費用」、および毎月の口座管理や従業員への投資教育にかかる「ランニングコスト(管理費用)」が必ず発生します。
導入を検討する際は、これらの費用を差し引いた上で、長期的な税制優遇のメリットや運用益が上回るかどうかを冷静にシミュレーションして判断する必要があります。
2. はぐくみ基金(確定給付企業年金)
投資リスク(元本割れ)を懸念する経営者や、着実な資産形成を望む場合には、「はぐくみ基金」のような確定給付企業年金(DB)も有力な選択肢となります。
企業型DC(運用成績によって将来の受取額が変動する)とは異なり、原則として元本が確保され、予定利率に基づいた着実な資産形成が可能です。こちらも掛金は全額損金算入できるため、内部留保としてただ現金を置いておくよりも、はるかに高い税務メリットを享受しながら安全に退職金を準備できます。企業型DCと併用できる場合もあるため、経営者のポートフォリオの一部として検討する価値が大いにあります。
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【経営者向け】はぐくみ基金とは?企業型DCと併用して退職金を最大化する活用法3. 小規模企業共済
小規模な法人の役員であれば、国が用意している経営者のための退職金制度「小規模企業共済」も基本中の基本です。
掛金は全額が「個人の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)」となるため、役員報酬から支払うことで個人の所得税・住民税を直接的に引き下げることができます。月額最大7万円(年間84万円)まで積み立て可能です。
制度活用でどれくらい変わる?シミュレーションの重要性
「内部留保のまま」の場合と「企業型DCなどの制度を活用した場合」で、最終的な手残り額がどれほど変わるのかを把握することは、経営判断において非常に重要です。
たとえば、月々数万円の掛金であっても、法人税の圧縮効果、運用益の非課税効果、そして将来の退職所得控除を組み合わせることで、10年・20年のスパンで見れば数百万円から数千万円単位の「手元に残る金額の差」が生まれます。
頭で理解するだけでなく、ご自身の現在の役員報酬額や年齢、設定したい掛金を入力して「実際の節税額や、将来の退職給付額をシミュレーションしてみる」ことが、効率的な資産形成への第一歩です。具体的な数字を見ることで、内部留保に頼る「もったいなさ」がより明確になるはずです。
▼ まずは具体的な数字をチェック!
【無料診断】役員報酬から計算!企業型DC導入による税金・将来の退職給付額シミュレーターまとめ:会社と社長個人の両方を守る財務戦略を
経営者の退職金を内部留保だけで準備するのは、税金面でも資金効率の面でも大きなロスが発生しています。
「税引き後の利益」を会社にただ貯め込むのではなく、企業型DCやはぐくみ基金といった国の制度を正しく活用(初期費用やランニングコストを考慮した上で)することで、会社の法人税負担を適正化しつつ、経営者自身の確固たる老後資産を築くことができます。
まずは、現状の内部留保の積み上がり方を見直し、ご自身にとってどの制度が最も効率的なのか、シミュレーションを通じて具体的な数字で比較検討してみてはいかがでしょうか。

