企業型DCは差し押さえ禁止?社長の資産防衛と事業リスク対策

中小企業の経営者様は、日々会社の成長や従業員の生活を守るため、ご自身のことは後回しにして奮闘されていることかと思います。事業を拡大していく喜びがある一方で、心のどこかには常に「万が一、経営が立ち行かなくなったらどうなるのだろう」という事業リスクへの不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
とくに中小企業の場合、会社の借入に対して社長ご自身が連帯保証人になっているケースも少なくありません。そうした中で、社長ご自身や従業員の大切な退職金準備として注目されているのが「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。
経営者様の間で、「企業型DCの資産は、万が一の際にも差し押さえられないらしい」という話題が出ることがあります。この記事では、企業型DCの法的な位置づけを正しく紐解きながら、経営者の「資産防衛」という観点でどのような役割を果たすのか、留意点も交えて分かりやすく解説いたします。
目次
企業型DC(確定拠出年金)は「差し押さえ禁止財産」って本当?
結論から申し上げますと、企業型DCで積み立てた年金資産は、原則として差し押さえが禁止されている「差押禁止財産」に該当します。(※執筆時点の法律に基づきます)
結論:原則として差し押さえは禁止されています
確定拠出年金法第32条では、企業型DCの給付を受ける権利(受給権)について、以下のように定めています。
- 譲り渡すこと(他人に権利を渡すこと)
- 担保に供すること(借金のカタにすること)
- 差し押さえること
これらは原則として禁止されています。つまり、会社が倒産したり、社長個人の債務整理(自己破産など)をせざるを得ない状況になったりしても、企業型DCの口座にある年金資産は債権者に没収されることなく、守られる可能性が高いのです。
(※ただし、税金や社会保険料を滞納して「滞納処分」を受ける場合など、一部の例外においては差し押さえの対象となることがあります)
なぜ企業型DCの資産は保護されるのか?
「借金を返せないのに、なぜ自分の資産だけ守られるのか?」と疑問に思われるかもしれません。その理由は、企業型DCという制度の目的にあります。
企業型DCは、公的年金を補完し「国民の豊かな老後の生活を保障する」ために国が用意した制度です。万が一の経済的破綻によって、その人の「老後を生きていくための最低限の資金」まで奪ってしまうと、最終的に国の生活保護などに頼らざるを得なくなってしまいます。そのため、国は法律によって個人の年金資産を強力に保護しているのです。
経営者の資産防衛策として企業型DCを活用するメリット
企業型DCが差押禁止財産であるという前提を踏まえると、経営者様にとって以下のような大きなメリットが見えてきます。
会社と個人の資産を切り離し、将来の備えを確保
中小企業では、会社のお金と社長個人のお金の境界線が曖昧になりがちです。会社の資金繰りが厳しくなれば、社長個人の貯金を取り崩して補填するというお話もよく耳にします。
しかし、企業型DCを通じて毎月掛金を拠出しておけば、その資金は会社の資産から「個人の年金資産」へと完全に切り離されます。連帯保証という重圧を背負う経営者だからこそ、事業リスクとは切り離された安全な場所で、ご自身のご家族と老後のための資金を確保しておくことが非常に重要です。
税制優遇を活かした効率的な退職金準備
資産を守るだけでなく、効率よく増やすための税制優遇が充実している点も、企業型DCの大きな魅力です。(※執筆時点の税制に基づきます)
- 会社側: 役員や従業員のために拠出した掛金は、全額「損金」として計上できます。
- 個人側: 掛金は所得とみなされないため、その分の所得税や住民税がかかりません。
このように、事業の利益を適正にコントロールしながら、税負担を抑えつつ計画的に退職金をつくる仕組みとして機能します。
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強力な資産防衛と税制優遇のメリットがある企業型DCですが、万能な魔法の杖ではありません。導入をご検討される際には、以下の留意点もしっかりとご理解いただく必要があります。
原則60歳まで資産を引き出せない
企業型DCの最大の留意点は、「老後資金の形成」を目的としているため、原則として60歳になるまで途中で引き出すことができない点です。
「会社の資金繰りが急に悪化したから、積み立てたDCの資金を引き出して運転資金に回そう」といったことはできません。掛金を設定する際は、無理のない金額で計画的に行うことが鉄則です。
資産運用のリスク(元本割れ)と各種手数料
企業型DCは、拠出された掛金を「加入者自身(社長や従業員)」が自己責任で運用する制度です。定期預金や保険などの元本確保型商品を選ぶこともできますが、投資信託などを選んだ場合、運用の結果次第では受け取る金額が掛金総額を下回る(元本割れする)リスクがあります。
また、制度を維持・管理するために、口座管理手数料などの各種コストが継続的に発生する点もあらかじめ理解しておく必要があります。
受け取り時には税金がかかる場合も
「非課税で受け取れる」と誤解されることがありますが、60歳以降に資産を受け取る際には課税の対象となります。
一時金として受け取る場合は「退職所得」、年金として分割で受け取る場合は「雑所得」となります。それぞれ「退職所得控除」や「公的年金等控除」といった大きな優遇枠があるため税負担は軽くなる傾向にありますが、無税ではない点にご注意ください。
制度のメリットを最大化する「継続的な投資教育」
ここまでお伝えした通り、企業型DCは経営者の資産防衛や従業員の福利厚生として非常に優れた制度ですが、運用リスクやルールの複雑さといった課題もあります。
企業型DCは「導入して終わり」ではありません
制度を形骸化させず、社長様ご自身や従業員様が「本当にやってよかった」と思える退職金制度にするためには、正しい金融知識が不可欠です。投資のリスクを正しく理解し、長期的な視点で資産を育てていくスキルを身につけなければ、不安から元本確保型商品ばかりに偏り、せっかくの制度を活かしきれないケースも少なくありません。
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まとめ
企業型DCは、原則として「差し押さえ禁止財産」として法律で守られており、連帯保証などの事業リスクを抱える中小企業経営者様にとって、非常に心強い「資産防衛策」となります。さらに、税制優遇を活用することで、効率的な退職金準備と福利厚生の充実を同時に実現することが可能です。
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