【基礎解説】企業型DC(企業型確定拠出年金)とは?仕組み・メリット・導入の流れをわかりやすく解説

はじめに

老後2,000万円問題」が話題となり、将来の資産形成への関心が高まっています。
その中で、有効な選択肢の一つとして注目されているのが「企業型DC(確定拠出年金)」です。
本記事では、企業型DCの基本的な仕組みから、多様な制度設計、従業員・企業双方のメリット、そして導入の流れまでを、初心者にも分かりやすく解説します。

企業型DC(確定拠出年金)とは?

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を拠出し、従業員(加入者)自身がその資金を運用して、将来の年金資産を形成していく制度です。
英語では "Defined Contribution Plan" と呼ばれるため、「DC」と略されます。

日本の年金制度は、以下の3階建て構造になっています。

1階:国民年金(全国民が加入)
2階:厚生年金(会社員・公務員などが加入)
3階:企業年金私的年金など

企業型DCは、この3階部分にあたる「私的年金」の一種です。
従来の企業年金である「確定給付年金(DB)」が将来の給付額を企業が保証するのに対し、企業型DCは運用成果によって将来受け取る年金額が変動するのが大きな特徴です。

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企業型DCの仕組み

企業型DCは、大きく分けて「拠出」「運用」「給付」の3つのステップで構成されています。

拠出(掛金を積み立てる)

  • 企業が従業員のために毎月一定の掛金を拠出します。
  • 企業の規約によっては、従業員が掛金を上乗せできる制度もあります。

運用(お金を増やす)

  • 従業員(加入者)は、金融機関が用意した複数の金融商品(投資信託、保険商品、定期預金など)の中から、自分の運用方針に合わせて商品を選び、掛金を運用します。
  • どの商品をどのくらいの割合で組み合わせるか(ポートフォリオ)は、従業員自身が決定します。

給付(お金を受け取る)

  • 原則として60歳以降に、運用してきた資産を「老齢給付金」として受け取ることができます。
  • 受け取り方法は、一時金(一括)、年金(分割)またはその両方の組み合わせから選択できます。

企業型DCの多様な制度設計

企業型DCの掛金の拠出方法は、企業の規約によって様々です。
ここでは代表的な制度設計を紹介します。

  • 企業負担型(基本形)
    企業のみが掛金を拠出する、最もシンプルな制度です。
    従業員の負担なしで、将来の資産形成を始めることができます。
  • マッチング拠出
    企業が拠出する掛金に、従業員自身が掛金を上乗せできる制度です。
    ただし、従業員の拠出額は企業の拠出額を超えられず、かつ合計額に上限があります。
    従業員が拠出した掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
  • 選択制DC
    企業が従業員の給与の一部を「生涯設計手当」などの名目で切り出し、従業員が「給与として前払いで受け取る」「企業型DCの掛金として拠出する」かを選択できる制度です。
    掛金として拠出した分は給与と見なされないため、税金や社会保険料の算定基礎から外れるという大きなメリットがあります。
  • 併用型(A+B型)
    企業の基本掛金(A)に加えて、選択制DC(B)を併用するハイブリッド型の制度です。
    基本的な福利厚生を確保しつつ、従業員のライフプランに合わせた柔軟な資産形成を可能にします。

企業型DCのメリット

企業型DCは、従業員と企業の双方に大きなメリットがあります。

従業員側のメリット

強力な税制優遇と社会保険料の軽減

  • 拠出時:
    会社が拠出する掛金は給与と見なされず、所得税・住民税がかかりません。さらにこの掛金は社会保険料の算定基礎からも除外されます。
    特に「選択制DC」では、この社会保険料の負担軽減効果が大きくなります。
    また「マッチング拠出」で従業員が拠出した掛金は、全額が所得控除の対象です。
  • 運用時:
    通常、金融商品の運用益には約20%の税金がかかりますが、企業型DCの運用益は非課税です。
  • 受取時:
    一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。

ポータビリティ(持ち運びやすさ)

転職や退職をしても、積み立てた年金資産を転職先の企業型DCやiDeCoに移換できます。

資産形成の意識向上

自ら運用商品を選ぶことで、投資や経済に関する知識が身につき、主体的な資産形成が促されます。

企業側のメリット

福利厚生の充実

従業員の老後の資産形成を支援することで、満足度の向上や人材の採用・定着につながります。

掛金は全額損金算入可能

企業が拠出する掛金は全額損金計上でき、法人税負担を軽減できます。

退職給付債務が発生しない

確定給付年金(DB)と異なり、将来の給付額を約束しないため、退職給付債務が発生せず、財務への影響を抑えられます

デメリットと注意点

  • 原則60歳まで引き出せない
    老後の資産形成を目的とした制度のため、途中で資金を引き出すことは原則できません。
  • 元本割れのリスク
    投資信託など変動商品で運用する場合、運用成果により元本を下回る可能性があります。
  • 手数料の発生
    制度導入時の初期コストや、口座維持費などの手数料が発生します。

企業型DCの導入の流れ

企業が企業型DCを導入する際の一般的な流れは以下の通りです。
専門知識が必要となるため、多くの企業がコンサルティング会社と協力して進めます。

  1. 専門家(DC導入コンサルティング会社)への相談
    自社の目的や課題に合った制度設計を専門家に相談。
  2. 導入の検討・意思決定
    制度の目的、掛金水準、対象者などを具体的に検討し、導入を決定。
  3. 運営管理機関の選定
    制度運営を委託する金融機関(銀行・証券など)を選定。
  4. 規約の作成と承認申請
    自社に合った企業年金規約を作成し、厚生局に承認申請。
  5. 従業員への説明会
    制度の仕組みやメリット、運用商品の選び方を説明。
  6. 加入手続きと運用開始
    従業員が加入手続きを行い、掛金の拠出・運用がスタート。

まとめ

企業型DCは、税制優遇や社会保険料軽減という大きなメリットを活かしながら、
従業員が主体的に老後の資産形成を行える優れた制度です。
企業にとっても、福利厚生の充実や財務上のメリットがあり、導入価値の高い制度といえるでしょう。

個人の資産形成への関心が高まる中、企業型DCは従業員と企業の双方にとって
「Win-Win」の関係を築くための重要な鍵となります。
この記事が、企業型DCへの理解を深める一助となれば幸いです。

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