【税理士が語る】知らなきゃ損する、中小企業の新しい節税対策


「毎年、決算期になると税金の支払いに頭を悩ませる…」

多くの中小企業の経営者様から、このようなご相談をいただきます。
頑張って利益を出したのに、その多くが税金で消えていく…このジレンマは、事業を続ける上で避けて通れない課題です。

しかし、実はその考え方自体が少し違っているかもしれません。
税金対策は、「単に税金を減らす」という受動的なものではありません。

それは、会社に残るキャッシュを最大化し、未来の成長に再投資するための「戦略」です。

国は、中小企業の活性化を目的として、様々な優遇税制を設けています。
しかし、情報が多岐にわたり複雑なためその存在すら知らない経営者様がほとんどで、知っているか知らないかだけで会社の将来に大きな差が生まれてしまうのです。

本記事では、中小企業の経営者様がすぐに実践できる、最新かつ効果的な節税対策を単なる制度の紹介に留まらず
その制度がなぜあなたの会社に役立つのか、どのように活用すべきかを税理士の視点から徹底解説し具体的にご提案します。


節税の基本は、会社の利益を圧縮することです。
利益は「収益-費用」で計算され、つまり収益を減らすか、費用を増やすか…どちらかで利益は下がります。

健全な経営において、収益を減らすことは本末転倒です。
したがって、合法的に「費用」を増やすことが、節税対策の王道となります。

費用を増やすといっても、無駄遣いをしては意味がありません。
重要なのは、「将来の事業成長につながる支出」を国が認める「費用」に置き換えることで、この思考こそが賢い節税の第一歩となります。

賃上げ促進税制:社員も会社も豊かになる黄金の節税策

「社員の給与を上げてあげたいけど、人件費が増えるのが怖い…」

このジレンマを解決するのが、賃上げ促進税制です。
これは、社員の給与を一定額以上引き上げた場合、その増加額の最大40%を法人税から直接控除できるという、非常に強力な制度です。

2024年4月の改正で、要件が大幅に緩和され、より多くの中小企業が利用しやすくなりました。

活用例:

  • 前期から給与総額を1.5%(大企業は2.5%)以上増やした場合、増加額 の15%を法人税から控除。
  • さらに、教育訓練費を増やしたり、女性活躍や子育て支援に取り組むと、最大40%まで控除率がアップ。

この制度の最大のメリットは、単に税金が減るだけでなく、社員のモチベーション向上、優秀な人材の確保・定着、そして企業のブランドイメージ向上にもつながる点です。

企業型確定拠出年金(企業型DC):退職金制度の革命と強力な節税効果

  • 「退職金制度がないと、なかなか優秀な人が集まらない…」
  • 「でも、従来の退職金制度は会社の負担が大きくて難しい…」

このような悩みを抱える中小企業に最適なソリューションが、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
これは、単なる福利厚生ではなく、会社の節税と社員の老後資産形成を同時に実現する、現代の退職金制度と言えます。

企業側のメリット:

  • 掛金が全額「損金」となり、法人税が圧縮できます。
    例えば、社員10人に毎月1万円ずつ拠出すれば、年間120万円が会社の利益から差し引かれ、その分の法人税が減ります。
  • 社会保険料の算定対象外のため、会社負担が軽減されます。これは従来の退職金制度にはない大きな強みです。
  • 優秀な人材の確保と定着率の向上につながります。
    特に若手や中堅層は、将来の資産形成に関心が高く、DC制度は大きな魅力となります。
  • 会社の掛金が、従業員への「投資」として明確に認識されるため、エンゲージメントを高める効果が期待できます。

従業員側のメリット:

  • 会社が拠出した掛金は、給与として扱われないため、所得税・住民税の対象になりません。
  • 運用で得た利益は非課税です。
  • 将来受け取る際には、退職所得控除などの税制優遇が受けられます。

注意点:
企業型DCを導入すると、会社は継続的に掛金を拠出する義務が生じます。
導入前に、専門家と相談して無理のない範囲で制度を設計することが重要です。

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中小企業経営強化税制:設備投資が節税につながる

事業拡大のために、新しい機械やソフトウェアの導入を検討していませんか?

中小企業経営強化税制を活用すれば、その投資が直接的な節税効果を生み出します。
この制度は、経済産業大臣が指定した特定の設備を取得した場合、以下のいずれかを選択できる優遇措置です。

  • 即時償却: 取得した年に、設備投資額の全額を費用(経費)として計上できます。
    例えば、1,000万円の機械を導入した場合、その年に1,000万円を費用にできるため、その年の利益を大きく圧縮できます。
  • 税額控除: 取得した設備投資額の10%(または7%)を法人税から直接控除できます。
    例えば、1,000万円の設備投資なら、100万円が法人税から直接引かれます。

どちらを選択するかは、その年の会社の利益状況によって判断します。
利益が大きく、一気に圧縮したい場合は「即時償却」、長期的に安定して節税したい場合は「税額控除」が向いています。

事業再構築補助金・IT導入補助金:補助金活用で税金も賢く対策

「補助金は、税金が増えるから…」という誤解をされている方もいらっしゃいますが、これはもったいない考え方です。
補助金は、原則として収益として扱われるため、通常は課税対象となります。

しかし、圧縮記帳という特別な会計処理を行うことで、課税を繰り延べることができます。

圧縮記帳とは?
補助金収入を、固定資産の取得価額から差し引いて計上する会計処理です。これにより、補助金を受け取った年の利益を圧縮し、法人税を抑えることができます。

活用例:

  • 事業再構築補助金: 新規事業への転換や業態変更を支援する、最大1.5億円という大規模な補助金。
  • IT導入補助金: ソフトウェアやクラウドサービスなどのITツール導入を支援する補助金。

これらを活用すれば、国の資金で設備やシステムを導入し、さらに税金の支払いを抑えることが可能になります。

小規模企業共済:経営者の退職金と節税を両立

経営者自身の老後資金準備と節税を同時に叶えるのが、小規模企業共済です。
これは、国の機関が運営する、個人事業主や中小企業の経営者向けの退職金制度です。

メリット:

  • 掛金が全額「所得控除」となり、所得税・住民税が節税できます。
  • 月額1,000円から70,000円まで、自由に掛金を設定できます。
  • 共済金は一括で受け取ると「退職所得」、分割で受け取ると「公的年金等の雑所得」として、税制上の優遇措置が適用されます。

経営者自身が未来に備えながら、個人の所得税を確実に減らせる非常に有効な手段です。

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済):もしもの備えが節税に

取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための共済制度です。
月額5,000円から20万円まで掛金を積み立てることができ、万が一の際には、積み立てた掛金総額の10倍まで(最高8,000万円)の共済金の貸付が受けられます。

  • 節税メリット:掛金は全額「損金」として認められます。

ただし、40カ月以上掛金を支払わないと解約時に元本割れする可能性があるため、長期的な視点で検討することが重要です。

決算直前の駆け込み節税:正しい知識でキャッシュを残す

決算期が近づき、想定以上の利益が出そうだと慌てる経営者様も多いでしょう。
そんな時のために、決算直前でも間に合う節税対策もご紹介します。

  • 短期前払費用:
    1年分の家賃、保険料などを一括で前払いすることでその期の費用に計上できます。ただし、継続的に行うことが条件です。
  • 消耗品のまとめ買い:
    事務用品、備品など、10万円未満の消耗品であれば購入した年に全額を費用にできます。
  • 役員報酬の見直し:
    役員報酬は期の途中で増減すると損金にできないため、見直しは「期首から3カ月以内」に行う必要があります。
    ただし、業績が悪化した際は臨時改定事由として認められる場合もあります。

これらの対策は、あくまでその年の利益を調整するための応急処置です。
計画的な対策と組み合わせることで、より効果を発揮します。


節税対策は、制度を知っているだけでは不十分です。
以下の3つのステップを踏むことで、最大限の効果を引き出すことができます。

  • 早期の計画:
    節税対策の多くは、決算期よりかなり前に準備が必要です。
    期の初めにその年の利益予測を立て、税理士とともに計画を策定しましょう。
  • 専門家との連携:
    税法は頻繁に改正され、複雑です。自社の状況に最適な対策は何か、どの制度を優先すべきかなど、専門家でなければ判断が難しい点が多くあります。
    中小企業の税務に特化した税理士に相談することで、会社に合った「オー ダーメイドの節税プラン」が実現できます。
  • 情報収集:
    国の新しい制度や補助金は、常に発表されています。経済産業省や中小企業庁のウェブサイトを定期的にチェックする習慣をつけましょう。


本記事でご紹介したように、中小企業が使える節税対策は数多く存在します。
これらはすべて、会社に残る資金を増やし、設備投資、人材育成、福利厚生の充実など、さらなる成長のための原資に充てることを可能にします。

節税は、会社の成長戦略の一部です。
ただ税金を減らすのではなく、「未来の投資」として捉えることで、あなたの会社はさらなる高みを目指せるでしょう。

この記事が、貴社の健全な経営と成長の一助となれば幸いです。
もし具体的なご相談やご質問がありましたら、お気軽にお近くの専門家にご相談ください。

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