企業型DC×新NISAで実現する「社長個人の1億円」資産形成ロードマップ

10〜50名規模の企業を牽引する経営者の皆様、日々思い描くビジョンの実現に向けてご尽力されていることと存じます。会社の成長に全力を注ぐ一方で、ご自身の「将来の資産形成」や「退職金の準備」は万全でしょうか。

役員報酬は高額になるほど所得税や住民税の負担が重くなり、手取りとして残る金額は想像以上に少なくなってしまいます。そこで、経営者ご自身の効率的な老後資産の形成手段として、非常に有力な選択肢となるのが「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。

本記事では、中小企業経営者が企業型DCを賢く活用し、さらに新NISAと組み合わせることでご自身の将来に向けた「1億円」の資産基盤を築くための実践的なロードマップを解説します。

1. なぜ経営者にとって「企業型DC」が資産形成の要になるのか

経営者が個人の資産を形成する上で、企業型DCは他の金融商品にはない突出した税制優遇を備えています。経営者にとって最大の魅力は「ご自身の効率的な退職金準備」にあります。

掛金が「非課税」で投資に回せる

通常、個人の証券口座で投資をする場合、税金が引かれた後の「手取り」から資金を捻出します。しかし、企業型DC(選択制DCなど)を活用すれば、役員報酬の一部を非課税のまま掛金として拠出できます。つまり、税金が引かれる前の「額面」の資金をそのまま運用に回すことができるため、資金効率が極めて高くなります。

運用中の利益が「全額非課税」になる

一般的に、投資の利益には約20%の税金がかかります。企業型DCではこの税金が一切かからず、利益がそのまま再投資されるため、長期運用による「複利効果」を最大限に享受できます。

受取時も「退職所得控除」などで税負担が軽くなる

将来、積み立てた資産を受け取る際にも、税制上の優遇枠(退職所得控除公的年金等控除)が適用され、出口における税負担も抑える仕組みが整っています。

【留意しておきたいコストの視点】

企業型DCは非常に優れた制度ですが、導入や運営には制度設計などの初期費用や、毎月の口座管理手数料などのランニングコストがかかります。「全くのゼロコストで手取りが増える」というわけではありません。
しかし、経営者ご自身の効率的な老後準備という長期的な視点に立てば、これらのコストを考慮しても、税制優遇によるメリットが大きく上回るケースがほとんどです。

2. 【基本シミュレーション】企業型DCのみで運用した場合

まずは、企業型DCの限度額である月額5.5万円(年額66万円)を拠出し、世界的な株式インデックスファンド等で長期運用を行った場合の基本シミュレーションを見てみましょう。

【シミュレーション条件】

  • 投資額:月額5.5万円の積立投資
  • ※運用利回りは、過去の長期的な市場データなどを参考に年利5%と8%で試算しています。(将来の運用成果を保証するものではありません)
運用期間(年齢例)年利5%の場合年利8%の場合
15年間
(45歳〜60歳)
約1,470万円
(元本990万円)
約1,910万円
(元本990万円)
25年間
(35歳〜60歳)
約3,300万円
(元本1,650万円)
約5,230万円
(元本1,650万円)
35年間
(25歳〜60歳)
約6,250万円
(元本2,310万円)
約1億2,500万円
(元本2,310万円)

運用期間が35年と長く取れる場合、利回り8%のペースで成長すれば企業型DCだけでも1億円を超える計算になります。しかし、40代や50代の経営者にとっては、DCの枠だけでは期間が足りず、1億円には届かないケースも多いはずです。

そこで活用したいのが「新NISA」との併用です。

3. 【実践編】企業型DC×新NISA(上限1,800万)で「1億円」を作る現実的なロードマップ

企業型DCを老後資金の「コア」としつつ、投資枠が大幅に拡大された新NISAを組み合わせます。ただし、新NISAには「生涯投資枠1,800万円(元本)」という上限があるため、これをどう戦略的に埋めていくかが経営者の腕の見せ所です。
ここでは、経営者が「25年間」または「20年間」で1億円の資産を築くための具体的な積立ペースをシミュレーションします。

パターンA:25年間で1億円を目指す場合(例:35歳〜60歳)

運用期間を25年確保できる場合、毎月の負担を抑えつつ、非課税枠(DCとNISA)を綺麗に使い切る理想的なペース配分が可能です。

【毎月の積立計画:合計11.5万円】

  • 内訳: 企業型DC 5.5万円 + 新NISA 6.0万円
  • NISA枠の消化: 毎月6万円 × 12ヶ月 × 25年 = ちょうど1,800万円(上限到達)

【25年後の予測資産額】

  • 年利5%の場合:約6,800万円
  • 年利8%の場合:約1億900万円

利回り8%のシナリオであれば、役員報酬から毎月11.5万円(うち5.5万円は税引き前資金)を拠出するだけで、非課税メリットを最大限に享受したまま、25年後に1億円の目標達成が視野に入ります。

パターンB:20年間で1億円を目指す場合(例:40歳〜60歳)

期間が20年と短くなる場合、1億円に到達するためには「NISA枠の早期消化」や、上限超過後の「特定口座(課税口座)」の活用が必要になります。

① 利回り8%想定で、NISA枠を「最短」で埋める戦略

手元の資金力に余裕がある経営者向けの手法です。最初の5年間でNISA枠を一気に埋め、その後は放置して複利で増やします。

  • 企業型DC:毎月5.5万円を20年間継続
  • 新NISA:毎月30万円を最初の5年間だけ拠出(5年で1,800万到達)、残り15年は追加投資せず運用のみ。
  • ▶ 20年後の予測資産額(年利8%):約1億200万円

② 利回り5%想定の場合(特定口座の併用が必要)

堅実な5%の利回りで20年以内に1億円を作る場合、必要な投資元本がNISAの1,800万円枠に収まりきりません。
この場合は、NISAの上限に達した後の積立分は、自動的に「特定口座(利益に対して約20%課税)」で運用していくことになります。税金はかかりますが、経営者個人の効率的な老後準備として、資産を現金のまま寝かせておくよりはるかに合理的な選択肢です。

4. 経営者が実践すべき「3つのステップ」と注意点

目標額が明確になったところで、具体的な行動ステップと注意点を整理します。

自社への「選択制DC」導入を検討する

まずは税引き前の資金を運用に回せる環境を作ることが第一歩です。現在の役員報酬の一部をDCの掛金として拠出できる制度設計を、専門家とともに検討しましょう。

インデックスファンドで「長期・分散」を貫く

投資の原則は、一時的な市場の暴落に一喜一憂しないことです。元本確保型(定期預金など)ではインフレによる価値目減りのリスクがあるため、「全世界株式」や「米国株式」に広く分散投資するインデックスファンドを中核に据えます。

原則60歳まで資金がロックされる点に注意する

企業型DCは老後資金の形成を目的としているため、原則60歳まで引き出しができません。会社の資金繰りや個人の急な出費には対応できない資金となるため、新NISAのような途中で引き出せる柔軟な口座や、手元資金(現預金)とのバランスを取ることが非常に重要です。

まとめ:経営者ご自身の「安心」が、会社の成長を加速させる

企業型DCと新NISAを組み合わせた資産形成は、毎月淡々と市場へ資金を投じ続ける、極めて堅実な道のりです。
しかし、その仕組みを早く作り、時間を味方につけることこそが、経営者個人としての確固たる経済的基盤(1億円)を築くための最適解と言えます。経営者個人としての将来の安心感が確保されてこそ、本業においてより大胆で長期的な意思決定が可能になるのではないでしょうか。

当サイトでは、経営者の皆様がご自身の状況に合わせて、将来の退職金受取額や節税効果を直接確認できるオンラインシミュレーターをご用意しております。
ご自身の役員報酬額をベースに、まずはどれほどの効果が見込めるのか。ぜひ一度シミュレーション画面で、具体的な数字を確かめてみることから始めてみませんか?