選択制DCで手取りが増える?社会保険料削減の仕組みと注意点をプロが解説

近年、多くの中小企業で導入が進んでいる「選択制DC(企業型確定拠出年金)」。
「老後の資金作り」という本来の目的に加え、「社会保険料や税金が安くなり、結果として手取り額が増える可能性がある」という画期的な仕組みが注目を集めています。
しかし、「手取りが増えるならやらない手はない!」と飛びつく前に、制度の裏側にあるデメリットもしっかり理解しておく必要があります。
本記事では、選択制DCの仕組みからなぜ手取りが増えるのか、そして将来の年金への影響まで、DCプランナーの視点で徹底的に解説します。
この記事でわかること
- 選択制DC(企業型確定拠出年金)の仕組みと「手取りが増える」理由
- 社会保険料・税金がどう変わるのか、具体的な数字イメージ
- メリットだけでなく、年金・給付金への影響など注意点の全体像
目次
選択制DCとは?仕組みを分かりやすく解説
選択制DCとは、企業が従業員の給与の一部を「生涯設計手当」といった名目で設定し、従業員がその手当を 「給与として現金で受け取る」か「企業型DCの掛金として拠出する」 かを選択できる制度です。

- A. 給与として受け取る → 所得税・住民税・社会保険料の対象
- B. 企業型DCの掛金として拠出する → 所得税・住民税・社会保険料の対象外
従業員は、自身の経済状況や将来設計に応じて、年に一度など(企業の規定による)拠出金額を変更できます。
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なぜ「手取り」が増えるのか?驚きの仕組みを解説
「給与から掛金を出すなら、自由に使えるお金(手取り)は減るはずでは?」と思うかもしれません。
しかし、選択制DCには他の貯蓄制度にはない「強力な節税・節保険料メリット」があります。
社会保険料の算定対象外になる
これが最大のポイントです。
通常、銀行預金やiDeCo(個人型確定拠出年金)に回すお金は、社会保険料が引かれた後の「額面給与」から拠出します。
しかし、選択制DCの掛金は「給与(標準報酬月額)」そのものを引き下げる扱いになり、
結果として、以下の保険料が安くなります。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
所得税・住民税が非課税
掛金として拠出した分は「所得」とみなされないため、所得税と住民税がかかりません。
例えば、月2万円を拠出する場合、年間の所得24万円分に対する税金がまるごと免除されるイメージです。
【シミュレーション】手取り額はどれくらい変わる?
実際に、年収360万円(月収約30万円、30歳)の人が、月額20,000円を拠出した場合の例を見てみましょう。
| 項目 | 拠出しない場合 | 20,000円拠出する場合 | 差額 |
| 額面給与(月) | 300,000円 | 280,000円 | -20,000円 |
| 社会保険料(概算) | 約44,400円 | 約41,500円 | +2,900円(安くなる) |
| 所得税・住民税(概算) | 約17,900円 | 約16,300円 | +1,600円(安くなる) |
| 実質的な手取り額 | 237,700円 | 222,200円 | -15,500円 |
ここが重要です!

20,000円を積み立てているのに、実際の手取りは15,500円しか減っていません。
つまり、「4,500円分の税金・保険料の削減効果」により、少ない負担で効率的に老後資金を準備できていることになります。
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選択制DCのメリット(企業・従業員別)
従業員側のメリット
- 運用益が非課税: 通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、DCなら非課税で再投資されます。
- 受取時の控除: 退職金として受け取る際は「退職所得控除」、年金形式なら「公的年金等控除」が適用され、出口でも税制優遇があります。
- 離職時の持ち運び: 転職先が企業型DCを導入していれば移換でき、そうでなければiDeCoへ移行可能です。
企業側のメリット
- 社会保険料の負担軽減:従業員の標準報酬月額が下がることで、会社負担分の社会保険料も減少します。
- 福利厚生の充実: 追加の人件費をかけずに、高度な退職金制度を導入できます。

知っておくべき注意点と「落とし穴」
メリットばかりに見える選択制DCですが、必ず確認すべき「注意点」があります。
将来の公的年金がわずかに減る
社会保険料(厚生年金保険料)を少なく払うということは、将来受け取る「老齢厚生年金」の受給額も減ることを意味します。
- 削減できる保険料・税金の総額
- 将来減る年金の総額
このバランスを考える必要がありますが、一般的には「DCの運用益」と「現在の節税効果」の合計が、年金の減少分を上回ることが多いとされています。
雇用保険関連の給付金が減る
失業給付、育児休業給付金、傷病手当金などは、休業前の給与額を基準に計算されます。拠出によって「給与」の定義が低くなるため、これらの給付額も数パーセント減少する可能性があります。
60歳まで原則引き出せない
確定拠出年金はあくまで「老後資金」の制度です。住宅購入資金や結婚資金として途中で引き出すことはできません。
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成功させるための資産運用のコツ
制度を導入・加入しても、元本確保型(定期預金など)だけに預けていては、インフレ(物価上昇)に負けてしまうリスクがあります。
- 分散投資: 株式、債券、国内、海外にバランスよく配分する。
- 長期保有: 短期的な値動きに一喜一憂せず、20年、30年のスパンで見守る。
- コスト(信託報酬)の確認: 運用手数料が低い商品を選ぶことが、最終的な受取額を大きく左右します。

まとめ:選択制DCは「賢い手取り最大化」のツール
本記事では、選択制DCは単なる貯蓄制度ではなく、
「税金・社会保険料を最適化しながら、自分の力で資産を築く」ための強力な武器であることを解説しました。
重要ポイント
- 選択制DCは「給与の段階」で控除されるため、社会保険料と税金の両方が下がる可能性がある
- 拠出額すべてが負担になるわけではなく、節税・節保険料分で実質負担は軽くなる
- 一方で、将来の年金額や雇用保険給付が減る可能性があり、理解した上で使うことが重要
将来の公的年金への影響というデメリットはありますが、それを補って余りある節税メリットと運用機会があります。「手元に残るお金を1円でも増やしながら、老後にも備えたい」という方にとって、これほど合理的な制度は他にありません。
まずは、自分の会社が提示している「生涯設計手当」の額を確認し、いくら拠出するのが自分にとって最適か、シミュレーションしてみることから始めましょう。
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