役員報酬の手取りを最大化する!経営者のための「選択制DC」活用術と節税効果

日本の税制において、高所得者層への負担は年々重くなっています。所得税・住民税に加え、経営者にとって大きな負担となっているのが「社会保険料」です。労使折半とはいえ、オーナー社長にとっては「会社の負担=自分の負担」。実質負担率は報酬の約30%にも達します。

「報酬を増やしても手取りが増えない」という閉塞感を打破する切り札が、選択制DC(選択制確定拠出年金)です。これは単なる年金制度ではなく、現役時代のキャッシュフローを改善する「最強の節税スキーム」と言っても過言ではありません。

1. そもそも「選択制DC」とは何か?

多くの人がイメージする「確定拠出年金(企業型DC)」は、会社が掛金を上乗せして拠出するものです。しかし、「選択制DC」は仕組みが異なります。

給与の一部を「受け取る」か「積み立てる」か選ぶ

選択制DCでは、会社が新たな原資を用意する必要はありません。現在の給与(役員報酬)の一部を切り出し、それを「生涯設計手当」などの名目で設定します。

役員(および従業員)は、以下の2つから自由に選択できます。

  • 全額を給与として受け取る(従来通り)
  • 一部(最大5.5万円/月)をDC掛金として拠出する

この「掛金として拠出する」ことを選んだ場合、その金額は「給与所得」とはみなされません。ここが最大のポイントです。

2. 手取りが増えるメカニズム:3つの節税効果

なぜ給与の一部をDCに回すだけで手取りが増えるのでしょうか。その秘密は、日本の税・社会保険制度の計算式にあります。

効果①:所得税・住民税の削減

選択制DCで拠出した掛金は、税法上「給与」としてカウントされません。つまり、掛金の分だけ額面年収が下がった状態で税金が計算されます。
所得税は累進課税ですので、課税所得が高い経営者ほど、この圧縮効果による税率差益が大きくなります。住民税(一律10%)も当然安くなります。

効果②:社会保険料の削減(等級ダウン)

iDeCo(個人型DC)と選択制DCの決定的な違いがここにあります。
iDeCoは所得税・住民税控除の対象ですが、社会保険料は安くなりません。しかし、選択制DCの掛金は「標準報酬月額」の算定基礎から外れます。

標準報酬月額の等級が下がれば、健康保険料・厚生年金保険料が減少します。
これは個人の手取りが増えるだけでなく、会社の法定福利費も同時に削減されることを意味します。

効果③:運用益が全額非課税

通常、株式や投資信託で得た利益には約20%の税金がかかりますが、DCでの運用益は全額非課税です。複利効果を最大限に活かしながら資産形成が可能です。

3. 【シミュレーション】どれくらい手取りが変わるのか?

では、実際にどれくらいのインパクトがあるのか、具体的な数字で見てみましょう。今回は一般的なオーナー社長のケースで試算します。

【モデルケース】
対象:45歳 オーナー社長(東京都在住・扶養家族あり)
役員報酬:月額100万円(年収1,200万円)
選択制DC掛金:月額55,000円(満額拠出)

▼導入前(DCなし)
額面年収:1,200万円
手取り年収:約850万円(税金・社会保険料等で約350万円が控除)

▼導入後(月5.5万円を拠出)
まず、給与としての受取額は月額94.5万円になります。
(年間の給与収入は1,134万円 + DC積立 66万円)

【削減効果と結果】

項目年間効果額(概算)
所得税・住民税の節税22万円
※税率約33%と仮定
社会保険料の削減
(個人負担分)
4万円
※健康保険料のみ減少
実質的な資産増年間 約26万円

個人の可処分所得(手取り給与+DC積立金+節税額)として見ると、年間約26万円分の実質的な資産増となります。
これを10年継続すれば、運用益がゼロだったとしても約260万円の差が生まれます。これが「手取り最大化」の正体です。

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4. 会社側のメリット:コストゼロで導入可能

経営者個人のメリットだけでなく、会社(法人)としてのメリットも強大です。

会社負担の社会保険料が下がる
役員や社員が掛金を拠出すれば、その分だけ標準報酬月額が下がります。結果、会社が負担する社会保険料(法定福利費)も削減されます。
上記のモデルケースの場合、会社負担分の健康保険料なども年間約4万円削減されます。従業員も含めて導入すれば、その削減額はさらに大きくなります。

多くのケースでは、削減された社会保険料の総額が、制度導入にかかるランニングコスト(管理手数料など)を上回ります。つまり、実質コストゼロ、あるいはプラス収支で福利厚生制度を導入できるのです。

賃上げの原資・採用力強化
浮いた法定福利費を原資に、実質的な賃上げを行うことも可能です。また、「退職金制度あり」「確定拠出年金あり」と求人票に書けることは、採用難の時代において強力な武器になります。

5. 出口戦略:受け取り時の税制優遇

積み立てたお金は、原則60歳以降に受け取りますが、ここでも強力な税制優遇があります。

  • 一時金で受け取る場合:「退職所得控除」が使えます。勤続年数が長ければ長いほど控除枠が増え、税金がほとんどかからずに現金化できるケースが多いです。
  • 年金で受け取る場合:「公的年金等控除」が適用されます。

給与として今受け取って高い税率で課税されるより、将来「退職金」として低い税率(分離課税)で受け取る方が、生涯手取り額は圧倒的に多くなります。

6. リスクとデメリット(必ず押さえるべき点)

メリットばかり強調しましたが、経営者として判断する際にはデメリットも理解しておく必要があります。

  • ① 60歳まで資金ロックされる
    DCは年金制度ですので、原則60歳まで引き出せません。「今すぐ現金が必要」という流動性は失われます。役員報酬の一部を「老後資金」として強制貯蓄する覚悟が必要です。
  • ② 将来の厚生年金受給額が減る可能性がある
    標準報酬月額が下がることで、将来受け取る「老齢厚生年金」がわずかに減る可能性があります。
    ※ただし、多くの試算において、「現役時代の節税額 + DCの運用益」の方が、「将来減る年金額」を大幅に上回ります。
  • ③ 元本割れのリスク
    運用商品は自分で選びます。投資信託を選べば市場環境により変動します。ただ、長期・積立・分散投資を行うことで、リスクはコントロール可能です。

7. 導入へのステップと実務

選択制DCは、明日からすぐに始められるものではありません。以下の手順が必要です。

  1. 制度設計・シミュレーション
    自社の給与体系に合わせ、どの程度メリットが出るか専門機関に試算を依頼します。
  2. 就業規則・給与規程の変更
    給与体系を変更(基本給の一部をライフプラン手当等に変更など)するため、規程の改定が必要です。
  3. 従業員説明会・同意
    不利益変更にならないよう丁寧な説明と同意取得が必須です。
  4. 厚生局への申請・承認
    規約を作成し、厚生局へ届け出ます。
  5. 運営管理機関との契約・口座開設
    SBIベネフィット・システムズや楽天証券など、DCの運営管理機関を選定します。

8. よくある質問(Q&A)

Q. 役員報酬を変更するタイミングでないと導入できませんか?

A. 原則として、役員報酬の改定は事業年度開始から3ヶ月以内(定期同額給与)に行う必要があります。したがって、導入のタイミングは決算期の変更に合わせて計画するのがベストです。ただし、制度導入自体は「福利厚生の拡充」と捉えられ、期中でも導入可能なスキームもありますが、税理士と相談の上、慎重に進めることを推奨します。

Q. 社員が「手取りが減るのは嫌だ」と言ったら?

A. 選択制DCはあくまで「選択制」です。今のままで良い(給与として全額受け取りたい)という社員は、加入しない選択ができます。無理強いする必要はありません。

Q. iDeCo(イデコ)をやっていますが、併用できますか?

A. 2022年の法改正により、併用がしやすくなりました。会社の掛金額と合計して月額5.5万円の範囲内などのルールはありますが、基本的に併用可能です。ただ、選択制DCの方が社会保険料削減メリットがあるため、選択制DCの枠を優先して使うのがセオリーです。

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結論:賢い経営者は「見えないコスト」を削減する

売上を100万円増やすのは大変ですが、選択制DCを導入して、税金と社会保険料という「流出コスト」を年間数十万円抑えることは、経営判断一つで可能です。

選択制DCは、以下の3点において、経営者にとって極めて合理的なソリューションです。

  • 個人の資産形成:税制優遇をフル活用して老後資金を作る。
  • 会社のコスト削減:法定福利費を圧縮し、利益体質を強化する。
  • 従業員満足度:税金のかからない退職金積立制度を提供する。

「知っているか、知らないか」。そして「やるか、やらないか」。
この差が、10年後、20年後のあなたと会社の資産残高に決定的な違いをもたらします。次回の役員報酬改定のタイミングに向けて、まずはシミュレーションから始めてみてはいかがでしょうか。

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