【経営者必見】中退共 vs 企業型DC!退職金制度として導入するならどっち?コストと効果を完全シミュレーション

「従業員の退職金制度を整えたいが、何から始めればいいかわからない」
「昔からある『中退共』と、最近よく聞く『企業型DC』。うちの会社にはどっちが合っているの?」
中小企業のオーナー社長から、このような相談を頻繁に受けます。どちらも国の後押しがある制度ですが、その性質や導入メリットは大きく異なります。
結論から言えば、どちらが「正解」ということはありません。会社の財務状況、従業員の年齢層、そして「何のために導入するのか(採用強化か、手離れの良さか)」によって選ぶべき制度は変わります。
この記事では、両制度をコスト、手間、従業員メリットの観点から徹底比較し、自社に最適な選択をするための判断材料を提供します。
目次
昔ながらの定番「中退共」の特徴
まずは、多くの中小企業で利用されている「中小企業退職金共済(中退共)」について整理します。
仕組み
中退共は、独立行政法人が運営する国の退職金制度です。会社が毎月掛金を支払い、従業員が退職した際に、機構から直接従業員へ退職金が支払われます。
メリット
- 国の助成金がある: 新規加入時や掛金増額時に、国からの助成金を受けられます(期間や条件あり)。
- 管理が楽: 掛金を口座振替で納付するだけで、運用や管理はすべて機構が行います。会社の手間は最小限です。
- 全額損金算入: 掛金は全額損金として計上でき、法人税の節税効果があります。
デメリット・注意点
- 運用利回りが低い: 基本的な予定利回りは1.0%(2024年時点の基準など)程度で固定されており、インフレ局面では実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。
- 懲戒解雇でも減額が困難: 退職金は機構から従業員へ直接振り込まれるため、万が一、横領などで懲戒解雇した社員であっても、会社側が支給を止めることは原則としてできません。
- 掛金の掛け捨てリスク: 短期退職(加入期間1年未満など)の場合、退職金が支給されず、会社が払った掛金も戻ってきません。
新時代のスタンダード「企業型DC」の特徴
次に、近年導入企業が急増している「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。
仕組み
会社が掛金を拠出し、従業員個人の口座に積み立てます。その資金を従業員自身が投資信託などで運用し、その運用結果(元本+運用益)を60歳以降に受け取る制度です。
メリット
- 社会保険料の適正化効果: 制度設計(選択制DCなど)によっては、掛金が給与とみなされないため、会社・従業員双方の社会保険料負担を軽減できる可能性があります。
- 運用益が非課税: 運用で増えた利益には税金がかかりません。
- ポータビリティ(持ち運び): 中途退職しても、個人の資産として転職先のDCやiDeCoに移換できます。
- 採用・定着への効果: 前回の記事でも解説した通り、金融教育とセットにすることで強力な採用ブランディングになります。
デメリット・注意点
- 元本割れのリスク: 運用結果は従業員の自己責任となります。運用商品によっては元本を割り込む可能性があります(※元本確保型商品を選ぶことも可能です)。
- 継続的な教育が必要: 従業員が自分で運用するため、導入後の投資教育が不可欠です。
- ランニングコスト: 中退共に比べ、口座管理手数料などの運営コストがかかる場合があります(コスト以上の社会保険料削減メリットが出るケースが多いですが、試算が必要です)。
【徹底比較】コストと効果のシミュレーション
では、経営者にとって最も気になる「コスト」と「効果」を比較してみましょう。
| 比較項目 | 中退共(中退共済) | 企業型DC(選択制) |
|---|---|---|
| 会社の負担 | 掛金のみ(助成金あり) | 掛金 + 運営管理手数料 |
| 社会保険料 | 削減効果なし | 削減効果あり (等級ダウンの場合) |
| 法人税 | 全額損金 | 全額損金 |
| 従業員の受取額 | 確定額(利回り固定) | 変動 (運用次第で大きく増える可能性) |
| 受取時期 | 退職時(いつでも) | 原則60歳以降 |
| 中途退職時の扱い | 条件により掛け捨て発生 | 全額個人の資産として持ち運び |
| 会社の手間 | ほぼなし | 導入手続き・継続教育が必要 |
コスト面の勝者は?
表面的な「手数料」だけ見れば中退共の方が安く済みます。しかし、企業型DC(特に選択制)には「社会保険料の削減効果」という大きな武器があります。
例えば、年収400万円の社員が月額2万円を企業型DCに拠出した場合、標準報酬月額の等級が下がれば、会社負担の社会保険料が年間数万円単位で削減できるケースがあります。社員数が多ければ、この削減額だけでDCの運営手数料を賄い、さらにお釣りがくることも珍しくありません。
従業員満足度の勝者は?
「今すぐ現金が欲しい」という短期的な視点では、退職時にすぐ貰える中退共に軍配が上がります。しかし、「老後の資産形成」という視点では、運用益非課税で複利効果を狙える企業型DCの方が、最終的な受取額が大きくなる可能性が高いです。
タイプ別診断:御社におすすめなのはどっち?
これまでの比較を踏まえ、どちらを選ぶべきかの判断基準を整理しました。
「中退共」がおすすめな企業
- 従業員の平均年齢が高く、あと数年で定年退職者が多い。
- 投資や運用といったものにアレルギーがある従業員が多い。
- とにかく手間をかけず、シンプルに退職金制度を用意したい。
- 従業員の定着率が高く、短期退職のリスクが低い。
「企業型DC」がおすすめな企業
- 20代〜40代の若手・中堅社員が多く、これから資産形成が必要。
- 社会保険料の負担が重く、合法的にコストを適正化したい。
- 採用活動において、「金融教育」や「資産形成支援」をアピールしたい。
- 社員に自立心や金融リテラシーを身につけさせたい。
導入前に必ず「シミュレーション」を
退職金制度は一度導入すると、簡単に廃止したり条件を下げたりすることが難しい制度です(不利益変更になるため)。
「助成金が出るから中退共」「流行っているから企業型DC」と安易に決めるのではなく、自社の人員構成や財務状況に合わせて、以下の点をシミュレーションすることが重要です。
- コスト試算: 掛金だけでなく、手数料や社会保険料の変化を含めたトータルコストはどうなるか。
- 受取額試算: 従業員にとって、将来いくら受け取れる見込みがあるか。
- 運用体制: 誰が制度の窓口になり、誰が社員への教育を行うか。
特に企業型DCの場合、導入効果を最大化するためには、制度設計の専門家による緻密なシミュレーションが欠かせません。
まずは、「現状の給与水準で導入した場合、会社と社員の手取りがどう変化するか」を試算してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
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