【住宅ローンがあってもDCはやるべき?】DCプランナーが教える、損しない家計の「優先順位」徹底解説

「念願のマイホームを購入したけれど、毎月のローン返済で家計はカツカツ……。」
「老後資金のためにiDeCo(イデコ)や企業型DC(確定拠出年金)を勧められたけれど、借金がある状態で投資なんてしていいの?」
住宅ローンを抱える現役世代の方から、このような相談を非常によく受けます。
結論から申し上げましょう。
「住宅ローンがあっても、原則としてDC(確定拠出年金)はやるべき」です。
むしろ、住宅ローンがある家庭こそ、DCのメリットを最大限に活かせる可能性が高いのです。
しかし、これには「家計の防衛資金(生活費の予備)」という重要な前提条件がつきます。やみくもに手を出せば、家計が破綻するリスクもあります。
今回はDCプランナーの視点から、感情論ではなく「数字」と「制度」に基づいた、住宅ローン保有者のための正しいお金の優先順位を解説します。
目次
1. 多くの人が陥る「借金返済=正義」の罠
日本人のメンタリティとして、「借金(ローン)は悪であり、早く返すのが正義」という考え方が根強くあります。そのため、手元に余剰資金ができると、すぐに「繰り上げ返済」をしたくなる方が多いのです。
もちろん、借金を減らすことで精神的な安心感は得られます。しかし、現在の経済環境において、「住宅ローンの繰り上げ返済」は、必ずしも経済合理性が高い行動とは言えません。
ここで比較すべきは、以下の2つの数字です。
- ✔ 住宅ローンの金利コスト(払うお金の利率)
- ✔ DC運用の期待リターン+節税効果(増えるお金の利率)
現在の金利環境を見る
現在、日本の住宅ローン(特に変動金利)は歴史的な低水準にあり、0.3%〜0.5%程度で借りている方も多いでしょう。これは、「銀行から極めて安いコストでお金を借りられている状態」と言い換えることができます。
一方、全世界株式などのインデックスファンドで長期運用した場合の期待リターンは、保守的に見ても年率3%〜5%程度と言われています。
単純な算数ですが、「0.5%の金利を減らすために手元資金を使う」よりも、「3%以上で増える場所に資金を置く」ほうが、資産全体は増えることになります。
しかし、これだけでは「投資は元本割れのリスクがあるじゃないか」という反論があるでしょう。そこで登場するのが、DC最強の武器である「節税効果」です。
2. DCが「繰り上げ返済」に圧勝する理由:確実な利回り
iDeCoや企業型DC(マッチング拠出)の最大の特徴は、「掛け金が全額所得控除になる」という点です。これを投資のリターンとして換算すると、驚くべき数字になります。
具体的なシミュレーション
例えば、以下の条件の方を想定してみましょう。
【モデルケース】
- ・年収:500万円
- ・所得税率:10%
- ・住民税率:10%
- ・DC掛金:月額2万円(年間24万円)
この方が年間24万円をDCに拠出した場合、年間4万8,000円(所得税2.4万+住民税2.4万)の税金が安くなります。
これを「利回り」として考えてみてください。 24万円の投資に対して、初年度で4万8,000円が確実に(年末調整などで)戻ってくるわけです。つまり、運用益がゼロだったとしても、スタート時点で「確実な20%のリターン」が約束されているのと同じです。
繰り上げ返済と比較すると?
もし、この年間24万円を「金利0.5%の住宅ローン繰り上げ返済」に充てたとします。軽減される利息額は、初年度でおよそ1,200円程度です。
- ✔ DCに拠出:
48,000円の得(節税メリット)+ 運用益(非課税) - ✔ 繰り上げ返済:
1,200円の得(利息軽減メリット)
勝負は明らかです。住宅ローン金利が1%未満の低金利環境下では、「繰り上げ返済するお金があるなら、その枠をDCの拠出に回して節税した方が、家計全体の純資産は増える」というのが、ファイナンシャルプランニングの正解となります。
3. 注意!「住宅ローン控除」との兼ね合い
ここで一つ、専門的な注意点をお伝えします。「iDeCoで課税所得を下げすぎると、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の効果が減るのではないか?」という懸念です。
住宅ローン控除は「支払った所得税・住民税」から戻ってくる仕組みです。iDeCoで税金を安くしすぎて、戻ってくる税金自体がなくなってしまっては本末転倒ではないか、という考え方です。
しかし、結論から言うと「ほとんどの人にとって、併用しても問題ない(両方のメリットを享受できる)」ケースが大半です。
- 住宅ローン控除は、まず「所得税」から引かれます。
- 引ききれなかった分は、「住民税」から引かれます(上限あり:前年課税所得の5%または9.75万円の小さい方)。
多くの年収層(400万〜800万円程度)であれば、iDeCoを行っても、住宅ローン控除を使い切れるだけの税額が残っているか、あるいは住民税からの控除枠でカバーできることがほとんどです。
「自分が損しないか心配」という方は、源泉徴収票の「源泉徴収税額」を確認してみてください。ここが極端に少ない場合を除き、基本的にはDCと住宅ローン控除のダブル取りを目指すべきです。
4. 絶対に守るべき「優先順位」のピラミッド
ここまで「DC有利」の話をしてきましたが、ここでちゃぶ台を返すような、しかし最も重要な話をします。
「手元の現金が少ないなら、DCをやってはいけません。」
DC(iDeCo・企業型DC)には致命的なデメリットが一つあります。それは「60歳まで原則引き出せない(資金ロック)」という点です。
住宅ローンを抱える家庭にとって、最大のリスクは「病気・失業・災害などで収入が途絶え、ローンの支払いが滞ること」です。この時、いくらDC口座に数百万の資産があっても、それを引き出してローン返済に充てることはできません。
そのため、DCプランナーが推奨する「お金の置き場所・優先順位」は以下の図解の通りです。

第1位:生活防衛資金(最強の盾)
まずは、何があっても生活を維持できる現金を貯めます。
- 目安: 生活費の3ヶ月〜6ヶ月分
- 置き場所: 普通預金(すぐに引き出せる場所)
これが貯まるまでは、DCや繰り上げ返済を考える必要はありません。まずは現金を確保してください。
第2位:DC(最強の矛)
生活防衛資金が確保できたら、次はDCです。
- 目的: 老後資金+現在の節税
- 理由: 先述の通り、節税効果という「確定利回り」が高すぎるため、NISAよりも優先度が高いです。特に所得税率が高い人ほど優先順位が上がります。
第3位:NISA(柔軟な剣)
DCの枠を使い切った、あるいは「60歳より前に使うかもしれないお金(教育費、家の修繕費、車の買い替え)」を貯める場合です。
- 特徴: いつでも売却・現金化できる流動性が魅力。
- 使い分け: 資金拘束されたくないお金はここで運用します。
第4位:住宅ローン繰り上げ返済(最後の調整)
現在の低金利下では、優先順位は最下位です。
- 行うべきタイミング:
- 変動金利が急上昇し、運用リターンを上回りそうな時。
- 退職金などでローンを完済し、老後の固定費を下げたい時。
- 「借金があること自体がストレスで眠れない」という心理的負担がある時。
5. シミュレーション:35歳・住宅ローン持ちの場合
最後に、具体的なアクションプランをイメージしてみましょう。
モデルケース:
35歳、会社員。住宅ローン残高3,000万円。
貯金が300万円(生活費6ヶ月分相当)貯まった。
毎月2万円の余裕資金ができた。
【NGな行動】
- × 毎月2万円でコツコツ繰り上げ返済をする
→ 利息軽減効果は微々たるもの。手元の流動性が下がるだけでメリットが薄い。 - × 貯金300万円のうち100万円を一気に繰り上げ返済する
→ 防衛資金が減り、急な出費や収入減に耐えられなくなるリスク増。
【OKな行動(DCプランナー推奨)】
- ◎ 毎月2万円をiDeCo(または企業型DC)に拠出する
→ 年末調整で年間約4〜5万円の税金が戻ってくる。その戻ってきた税金をプールしておき、将来の修繕費や、金利上昇時の繰り上げ返済資金として「別枠」で貯めておく。 - ◎ 運用商品は「全世界株式」などのインデックスファンドを選ぶ
→ 長期(60歳まで25年)の時間軸を活かし、複利効果で資産を増やす。
変動金利上昇への備えはどうする?
「でも、将来金利が上がったらどうするの?」という不安があると思います。
そのための正解は、「繰り上げ返済する」ことではなく、「繰り上げ返済できるだけの資産を運用で持っておく」ことです。
DCやNISAで運用しておき、もし将来、住宅ローン金利が3%や4%に跳ね上がるような事態になれば、その時に(NISA等の流動性資産から)まとめて返済すれば良いのです。金利が低い間は、低金利の恩恵(銀行のお金で運用できるレバレッジ効果)を享受し続けるのが賢い戦略です。
6. まとめ:住宅ローンは「恐れる」ものではなく「利用する」もの
住宅ローンがある状態でDCを始めることに罪悪感を抱く必要はありません。むしろ、低金利で住宅ローンを借りられていることは、資産形成において有利な条件にさえなり得ます。
重要なポイントのまとめ
- 金利差を見る:
住宅ローン金利(低) < DCの節税+運用益(高)。数字上はDCが圧倒的に有利。 - 資金ロックに注意:
DCは60歳まで引き出せない。まずは「生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分)」を確保するのが絶対条件。 - 優先順位を守る:
①防衛資金 → ②DC(節税) → ③NISA(流動性) → ④繰り上げ返済。 - 住宅ローン控除との併用:
ほとんどの場合で可能。ダブルでお得。
家計管理において「感情」と「勘定」は分けて考える必要があります。「借金を早く返したい」という感情は尊いですが、勘定(計算)してみると、今は焦って返す時期ではありません。
国が用意した「iDeCo/企業型DC」という最強の節税制度と、銀行が提供する「低金利ローン」の両方を賢く利用して、バランスの良い資産形成を進めていきましょう。
あなたが今すぐやるべきこと
最後までお読みいただきありがとうございます。
もしあなたが「まだiDeCoや企業型DCを始めていない」「マッチング拠出を限度額まで使っていない」のであれば、今週末にやるべきことは一つです。
「会社の給与担当者にDCの加入状況・
マッチング拠出の有無を確認する」
あるいは 「iDeCoの資料請求をする」
まずはここからスタートです。住宅ローン返済と老後資金作りは、二者択一ではありません。正しい優先順位で、両立が可能なのです。
あなたの家計が、より強固なものになることを願っています。
※本記事は一般的な制度解説・シミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。個別の税務判断については税理士等にご相談ください






