中退共は本当にお得?企業型DCとの“将来受取額の違い”をわかりやすく比較


中小企業の経営者にとって、従業員の退職金制度は重要な経営課題の一つです。

古くから「中退共(中小企業退職金共済)」が広く活用されてきましたが、
近年では「企業型DC(企業型確定拠出年金)」を導入する企業が急速に増えています。

どちらも優れた制度ですが、「従業員の将来の資産形成」という観点で見た場合、両者には決定的な違いがあります。

この記事では、特に「将来の受取額」に焦点を当て、中退共と企業型DCがどのように異なるのかを、わかりやすく比較解説します。

※中退共と企業型DCの制度の違いについての詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
中退共と企業型DC(企業型確定拠出年金)どちらが得?中小企業が選ぶべき退職金制度を徹底比較

結論:受取額の差は「運用」があるかないか


いきなり結論から申し上げると、
両者の将来的な受取額に大きな差が生まれる最大の理由は、「資産運用」の仕組みがあるかないかです。

  • 中退共:預けた掛金が、国が定める「予定利率」でほぼ固定で増えていきます。イメージとしては「積立定期預金」に近いです。
  • 企業型DC:預けた掛金を、従業員自身が選んだ金融商品で運用しますイメージとしては「積立投資」です。

この「運用」の有無が、10年後、20年後、30年後に数百万、場合によっては数千万円の差を生み出す可能性があります。

中退共:安心・安全だが「増えない」仕組み


まず、中退共の仕組みをおさらいします。

中退共(中小企業退職金共済)は、国がサポートする中小企業向けの退職金制度です。
会社が毎月掛金を支払い、従業員が退職した際に、中退共から直接従業員に退職金が支払われます。

中退共の受取額の決まり方

中退共の受取額は、基本的に「掛金月額」と「納付月数」でほぼ決まります。

掛金は、あらかじめ定められた「予定利率(※現在は年1.0%)」で運用されますが、これは固定金利の預金のようなものです。

メリット:

  • 仕組みがシンプルで、会社側の管理が楽。
  • 元本割れのリスクが(制度が続く限り)ない安心感。
  • 将来の受取額が予測しやすい。

デメリット(将来受取額の観点):

  • お金がほとんど増えません。
  • 現在の予定利率1.0%では、物価上昇(インフレ)に負けてしまい、実質的な資産価値が目減りする可能性があります。
  • 従業員が「自分の資産を育てる」という意識を持ちにくい。

例:月額1万円を30年間積み立てた場合

  • 掛金元本:1万円 × 12ヶ月 × 30年 = 360万円
  • 中退共の受取額:約 411万円

30年間で増えたのは、約51万円となります。

企業型DC:「増える」可能性を秘めた仕組み


次に、企業型DCです。

企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が掛金を拠出し、従業員自身がその資金を運用して将来の年金を準備する制度です。
アメリカの401kプランの日本版とも言われます。

企業型DCの受取額の決まり方

企業型DCの受取額は、「掛金元本」+「運用成果」で決まります。

従業員は、会社が用意した投資信託や保険商品などのラインナップから、自分のリスク許容度やライフプランに合わせて運用先を選びます。

メリット(将来受取額の観点):

  • 長期の「複利運用」により、資産が大きく増える可能性があります。
  • 運用で得られた利益は非課税です。
  • 従業員自身の金融リテラシーが向上し、資産形成への意識が高まります。

デメリット:

  • 運用がうまくいかなければ、元本割れのリスクもゼロではありません(ただし、元本確保型の商品も選べます)
  • 従業員自身が運用先を選ぶ必要がある(投資教育のサポートが重要)

例:月額1万円を30年間積み立てた場合

  • 掛金元本:1万円 × 12ヶ月 × 30年 = 360万円

企業型DCの受取額(シミュレーション)

  • 年利3%で運用できた場合:約 582万円(中退共より+約171万円)
  • 年利5%で運用できた場合:約 832万円(中退共より+約421万円)
  • 年利7%で運用できた場合:約 1,219万円(中退共より+約808万円)

※上記はあくまでシミュレーションであり、将来の成果を保証するものではありません。

知らなきゃ損
企業型DCは最強の節税対策!
5分でわかる資料を無料配布中
今すぐ無料ダウンロード

比較:なぜこれほど差がつくのか?

中退共と企業型DCのシミュレーション結果を並べてみましょう。

ご覧の通り、「運用」の力を活用するかどうかで、将来の受取額に2倍、3倍近い差が生まれる可能性があるのです。

中退共の「予定利率1.0%」は、一見すると現在の銀行預金金利(0.001%など)と比べて非常に高く、お得に感じるかもしれません。

しかし、企業型DCで期待できるグローバル経済の平均成長率(年3〜7%程度)と比較すると、その差は歴然です。

中退共の「お得さ」は、あくまで「元本が保証された預金」の延長線上での話であり、「資産形成」という観点では、企業型DCに大きな優位性があります。

まとめ:従業員の将来を本気で考えるなら


「退職金制度」を、単なる「退職時の手当」と考えるか、それとも「従業員が豊かな老後を送るための資産形成の柱」と考えるか。
経営者の思想が問われる時代になりました。

中退共が向いている企業

  • とにかくシンプルに、最低限の退職金手当を用意したい。
  • 従業員の平均年齢が高く、長期運用が難しい。
  • 投資や運用にアレルギーがある従業員が多い。

企業型DCが向いている企業

  • 従業員の「将来の受取額」を本気で増やしてあげたい。
  • 福利厚生を充実させ、優秀な人材の採用や定着につなげたい。
  • 従業員の金融リテラシーを高め、自律的なキャリア形成を支援したい。

中退共の「安心感」は魅力的ですが、インフレが進む現代において、お金が増えないことは実質的なリスクとも言えます。

従業員の豊かな未来のために、また、魅力的な会社づくりのために、
資産が育つ」仕組みである企業型DCの導入を、真剣に検討してみてはいかがでしょうか。

お役立ち資料
社長・役員報酬の手取りを増やし、退職金も準備できる!
賢く節税しながら社員満足度も高める企業型DCを紹介
今すぐ無料ダウンロード

ピックアップ記事

節税・財務戦略
企業型DC(確定拠出年金)とは? 中小企業に広がる節税と退職金準備の新しい仕組みを解説
資産形成・投資教養
給与から拠出できる選択制DCとは?企業・社員双方にメリットがある企業型確定拠出年金制度を徹底解説

よく読まれている記事