社長の退職金はいくらまでなら損金になる?功績倍率と企業型DCの違い

「自分の退職金は、いくらまでなら会社の経費(損金)にできるのか」。長く会社を経営してきた社長にとって、これは避けて通れないテーマです。

結論からお伝えすると、法律に「いくらまで」という金額の上限は定められていません。ただし、「不相当に高額な部分」は損金にならないというルールがあります。実務ではその目安として「功績倍率法」という計算方法が使われますが、これも法律で定められた安全ラインではありません。

そしてもう一つ、経営者に知っておいてほしいのが、企業型DC(企業型確定拠出年金)は、この役員退職金とはまったく違う構造で損金になるという点です。退任時に一括で大きく落とすのか、在任中に毎月コツコツ積んで損金にするのか。この違いを理解すると、退職金の準備の仕方が変わります。

この記事では、社長目線で、退職金の損金算入の考え方と企業型DCとの違いを整理します。なお、金額の妥当性判断は個別性が非常に高い領域です。実際の設計にあたっては、必ず顧問税理士にご相談ください。

📋 この記事でわかること

  • 役員退職金が損金になる範囲と、その法的な根拠
  • 功績倍率法の計算式と、「3.0倍」という数字の本当の位置づけ
  • 否認されないために押さえるべき実務ポイント
  • 企業型DCとの構造的な違いと、両者の組み合わせ方

1. 結論|金額の上限規定はない。あるのは「不相当に高額」という基準

まず、法律がどう定めているかを確認します。

役員退職金(役員退職給与)は、法人税法上、原則として損金に算入できます。ここは大きなポイントで、役員報酬のように「定期同額給与」「事前確定届出給与」といった支給形態の縛りはありません。長年の功績に報いるものとして、まとまった金額を損金にできる制度です。

ただし無制限ではありません。法人税法第34条第2項は、役員に支給する退職給与のうち「不相当に高額な部分の金額」は損金の額に算入しない、と定めています。役員退職金は会社が自由に金額を決められるぶん、恣意的に高額な設定をして税負担を減らすことがないよう、歯止めが設けられているわけです。

では、何をもって「不相当に高額」と判断するのか。その基準は法人税法施行令第70条第2号にあり、次の3つの要素に照らして判断するとされています。

  • その役員が法人の業務に従事した期間
  • その退職の事情
  • その法人と同種の事業を営み、事業規模が類似する法人の役員退職給与の支給状況

💡 ポイント:ここで重要なのは、法令は「いくらまでなら大丈夫」という具体的な金額も計算式も示していないということです。役員報酬(月額)における「定期同額給与」のような形式的なルールとは異なり、相対的・総合的に判断されるのが役員退職金の特徴です。だからこそ、金額の妥当性を説明できる根拠が重要になります。

2. 実務の物差し|功績倍率法とは

法律に計算式がないなら、実務ではどう金額を決めているのか。広く使われているのが功績倍率法です。

計算式
役員退職金の適正額 = 最終報酬月額 × 勤続年数(役員在任年数) × 功績倍率

たとえば、最終報酬月額100万円・役員在任25年・功績倍率3.0であれば、100万円×25年×3.0=7,500万円、という計算になります。仮に最終報酬月額が60万円であれば、同じ在任年数・倍率でも4,500万円となり、報酬水準の違いがそのまま金額に効いてくることが分かります。

功績倍率は役職に応じて設定するのが一般的で、社長・会長を高く、専務・常務・取締役と役職が下がるにつれて低く設定する形が多く見られます。民間の退職金実務では、代表取締役について3.0倍を用いる例もよく見られます。ただ、ここが最も誤解されやすいところです。

💡 ポイント:3.0倍が、税務上認められる標準倍率や安全ラインとして定められているわけではありません。 功績倍率法は、課税実務で採用され、裁判所もその手法の適法性を認めてきた計算方法ですが、倍率そのものに法定の基準はないのです。実際の判定では、同業・同規模の類似法人がどの程度の水準で支給しているかが基準になります。3.0倍で算定した役員退職金について、同業類似法人の平均功績倍率を基準に超過部分が否認された裁判例もあります。「3.0倍だから安心」と考えるのは危険です。

実務では、創業者としての功労を評価して「功労加算」を上乗せするケースもあります。ただしこれも、なぜその加算が妥当なのかを説明できる根拠がなければ、否認のリスクが高まります。

なお、役員退職給与の適正額を測る方法は功績倍率法だけではありません。裁判例では、平均功績倍率法のほか、1年当たり平均額法などが用いられることもあります。どの方法が適切かは、最終報酬月額がその役員の功績を適切に反映しているかなど、個別の事情によって変わります。

3. 「不相当に高額」はどう判定されるか

判定の3要素を、もう少し具体的に見ていきます。

① 業務に従事した期間

役員として何年会社に尽くしてきたか。功績倍率法で勤続年数を掛けるのは、この要素を反映するためです。在任期間が長いほど、退職金の適正額も大きくなります。なお、ここで数えるのは原則として役員としての在任期間です。従業員から役員に昇格した会社では、使用人であった期間の扱いをどうするかも整理が必要になります。

② 退職の事情

通常の勇退か、病気や死亡による退職かなど、退職に至った事情も考慮されます。たとえば在任中に亡くなった場合や、健康上の理由で退任せざるを得なかった場合など、事情によって評価は変わり得ます。

③ 同業類似法人の支給状況

実務上、最も判定を左右するのがこれです。同じ業種で事業規模が近い会社が、役員退職金をどの水準で支給しているか。課税当局は同業類似法人をサンプリングして功績倍率を算出し、その平均値(平均功績倍率)を用いることが多いとされています。なお、この抽出をどの範囲の会社から行うかについては、専門家の間でも議論があるところです。

ここに、経営者にとって厄介な現実があります。同業類似法人のデータは、課税当局は保有していても、一般の納税者が入手することは事実上困難です。つまり、会社側は「相手が持っている物差し」を正確には見られないまま金額を決めることになります。だからこそ、規程・議事録・算定根拠といった説明できる材料を整えておくことが、実務上の防御になります。

もう一つ見落とせないのが、最終報酬月額そのものの妥当性も見られる点です。功績倍率法は最終報酬月額を出発点にするため、その報酬額が職務の実態に対して不相当に高ければ、退職金の計算も過大と判断されかねません。

4. 否認されたらどうなるか

「不相当に高額」と判断されると、その超える部分の金額が損金不算入になります。

会社にとっては、経費として見込んでいた金額が否定され、その分の法人税等が追徴されます。役員退職金は金額が大きくなりがちなので、否認されたときのインパクトも相応に大きくなります。

しかも厄介なのは、会社側で損金にならなくても、それだけで個人側の税負担が軽くなるわけではないという点です。支給自体が所得税法上の退職手当等に該当する限り、法人側で一部が「不相当に高額」として損金不算入になっても、受取人側の所得区分が自動的に変わるわけではありません。会社側の損金算入と、本人側の所得区分は分けて考える必要があります。

「節税になるから大きく出す」という発想だけで金額を決めると、後から大きな代償を払うことになりかねません。

また、退職金の支給は多くの場合、社長が引退して会社の体制が変わるタイミングと重なります。後継者が経営を引き継いだ直後に多額の追徴が発生すれば、会社にとっても後継者にとっても大きな痛手です。金額を決めるときは、説明できる根拠があるかを常に意識してください。

5. 実務の注意点|規程・議事録・タイミング

否認されないために、実務で押さえるべきポイントを整理します。

① 役員退職慰労金規程を整備する

支給の対象・算定方法(功績倍率を含む)・支給時期を、あらかじめ規程で定めておきます。「そのとき決めた」のではなく「ルールに基づいて算定した」と説明できる状態にしておくことが大切です。規程は作って終わりではなく、実際の支給がその内容どおりに行われていることも重要です。規程と実際の支給額が食い違っていれば、規程の意味がなくなってしまいます。

ただし注意したいのは、規程に「社長は3.0倍」と定めてあるだけで、税務上の相当性が保証されるわけではないということです。法人税法上の判定は会社内部の規程ではなく、業務従事期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況などによって行われます。規程や議事録は必要な防御材料ですが、それさえあれば安全という「セーフハーバー」ではない、と理解しておきましょう。

② 株主総会の決議と議事録

役員退職金の支給には、株主総会等の決議が必要です。金額や支給時期を正式に決議し、議事録として残すことで、支給の適正な手続きを示せます。損金算入の時期は、原則として株主総会の決議等により金額が具体的に確定した日の属する事業年度とされています(法人税基本通達9-2-28)。ただし、法人がその退職給与を支払った日の属する事業年度に損金経理をした場合には、それも認められます。

いずれにしても、議事録は必ず残しておきましょう。

③ 最終報酬月額を下げすぎない

功績倍率法をそのまま適用すれば、最終報酬月額を下げるほど算定額は小さくなります。引退が近いからと役員報酬を大きく下げてしまうと、退職金の計算も小さくなるわけです。「もう 働く量が減ったから報酬を下げる」という判断が、結果的に退職金の枠を縮めてしまうことがあります。

ただし、退職の直前に報酬を大幅に引き下げたなど、最終報酬月額がその役員の過去の功績を適切に反映していないといえる特殊な事情がある場合には、最終報酬月額をそのまま基準にせず、別の算定方法を検討する余地もあるとされています。いずれにせよ、報酬の設計と退職金の設計はセットで考える必要があります。

④ 分掌変更での打切支給は慎重に

代表取締役を退任して会長や相談役になるタイミングで退職金を支給する「分掌変更」のケースは、実質的に退職したのと同様の事情にあるかが厳しく見られます。国税庁の通達では、その例として次のような場合が挙げられています。

  • 常勤役員が非常勤役員になったこと(実質的に経営上主要な地位を占めている場合を除く)
  • 取締役が監査役になったこと(実質的に経営上主要な地位を占めている場合などを除く)
  • 分掌変更後の役員給与がおおむね50%以上減少したこと(引き続き経営上主要な地位を占めている場合を除く)

いずれの場合も「実質的に経営上主要な地位を占めていないか」が問われます。形式だけ役職を変えて、実際には従来どおり経営に関与していると判断されれば、退職給与として扱われません。なお、支給額を未払金に計上した場合の金額は、原則としてこの打切支給には含まれないとされている点にも注意が必要です。

⑤ 資金繰り

税務とは別に、現実的な問題として一度に大きな資金が社外に出ていくという点があります。数千万円規模の支給になれば、その年の資金繰りへの影響は小さくありません。準備なしに「そのときの利益から」では、会社の体力を削ることになります。

しかも、退職金を支給した事業年度は大きな損金が計上されるため、会社が赤字になることもあります。赤字それ自体が悪いわけではありませんが、金融機関からの評価や、後継者に引き継ぐ財務状態への影響も考えておきたいところです。だからこそ、在任中から計画的に原資を準備しておくことが重要になります。

6. 企業型DCとの違い|「事後に落とす」か「事前に積む」か

ここからが本題です。同じ「社長の退職金」でも、役員退職慰労金と企業型DCでは損金になる仕組みがまったく違います

役員退職慰労金企業型DC(事業主掛金)
損金算入支給額の相当性の判定あり規約・法令に基づく掛金は拠出時に損金
金額法定の上限はないが、過大部分は損金不算入法令上の拠出限度額あり(月5.5万円、2026年12月〜6.2万円)
主な税務リスク過大な役員退職給与、退職の事実、損金算入時期など規約・拠出限度額への適合
社会保険料報酬でないため算定対象外
会社の資金支出退任時に大きくなりやすい在任中に継続して拠出
受け取り原則、退任時老齢給付金の受給要件を満たした後(原則60歳以降)
運用なし(会社が原資を準備)加入者本人が運用(増減あり)

💡 ポイント:最大の違いは、企業型DCの掛金は、法令・規約に基づいて拠出する都度、継続的に損金にできるという点です。役員退職慰労金は退任時にまとめて大きな損金を作れる反面、その金額が相当かどうかを問われます。企業型DCの掛金は金額の枠が法令で決まっているぶん、掛金そのものについて後から「高すぎる」と否認される性質のリスクがありません。

一方で、企業型DCにも制約があります。拠出できるのは月5.5万円(2026年12月からは6.2万円、DB等があれば控除後)までで、役員退職慰労金のようにまとまった額を一度に損金化することはできません。また、受け取りは原則60歳以降で、退任のタイミングで自由に引き出せるわけでもありません。

さらに、企業型DCは制度の導入・運営にコストと手間がかかります。規約の作成には労使の手続きが必要ですし、加入者ごとの運営管理手数料も発生します。「退任時に慰労金を出せばよい」という会社と比べれば、日々の管理は増えます。それでも早くから始める価値があるのは、拠出の都度、継続的に損金化しながら、退任時の資金負担を減らせるからです。

つまり、「事後に大きく落とす」のが役員退職慰労金、「事前に平準化して積む」のが企業型DC。どちらが優れているという話ではなく、性格が違うのです。

もう一つ、資産の置き場所という観点でも違いがあります。役員退職慰労金は、支給するまで会社の中に原資を置いておくことになります(あるいは保険などで準備します)。一方の企業型DCは、拠出した時点で加入者本人の個人別管理資産となり、会社の外に積み上がっていきます。給付を受ける権利は法律上、原則として譲渡・担保提供・差押えが禁止されているため(国税滞納処分等は例外)、事業のリスクから切り離せる点も、経営者にとっては意味のある違いです。

7. どう組み合わせるか|出口の順序に注意

注意|「税務上まったくの別枠」とは限らない

組み合わせを考える前に、必ず押さえておきたい論点があります。

企業型DCの事業主掛金は、企業型年金規約に基づいて拠出するもので、掛金そのものが功績倍率による相当性の判定を受けるわけではありません。ここまでは前章のとおりです。

ただし、法人税基本通達9-2-31には次の定めがあります。退職した役員が、その退職した法人から退職給与の支給を受けるほか、既往における使用人兼務役員としての勤務に応ずる確定拠出企業型年金規約に基づく給付(ほか厚生年金基金・確定給付企業年金・適格退職年金契約の給付)を受ける場合には、その給付を受ける金額をも勘案して、退職給与の額が不相当に高額であるかどうかを判定する、というものです。

💡 ポイント:つまり、一定の場合には、企業型DCからの給付額も含めて「会社が支給する役員退職金が過大でないか」が判断されることになります。「企業型DCは完全な別枠だから、会社からの役員退職金は従来どおり満額出せる」と単純に考えるのは危険です。なお、この通達が対象としているのは既往における使用人兼務役員としての勤務に応ずる給付であり、どこまでが対象になるかは個別の事情によります。両方を併用する場合は、退任前に必ず税理士へ確認してください。

組み合わせ方の基本

以上を踏まえたうえで、実務的には両方を組み合わせるのが現実的です。在任中は企業型DCで積み立てて拠出時に損金化し、退任時には役員退職慰労金を支給する。この二層構造なら、資金負担も平準化でき、退任時に一度に用意する額も抑えられます。

企業型DCで積み立てた分は、退任時に会社から支出するお金ではありません。そのぶん、退任時に必要な現金を抑えられるということは、会社の資金繰りにも、後継者に引き継ぐ財務内容にもプラスに働きます。長い時間をかけて準備できる社長ほど、この効果は大きくなります。

ただし、出口では注意が必要です。

企業型DCの一時金も役員退職慰労金も、受け取る側は退職所得として扱われます。近い時期に両方を一時金で受け取ると、退職所得控除の重複調整が働きます。2026年以降は、受け取る順番によって確認する期間が変わります。DCの一時金を先に受け取り、あとから会社の退職金等を受け取る場合は前年以前9年、会社の退職金等を先に受け取ってあとからDCの一時金を受け取る場合は前年以前19年が関係します。

なお、これは「必ず9年間・19年間空けなければならない」という制度ではなく、その期間内に重複する勤続期間等がある場合に退職所得控除を調整するルールです。それでも、どちらを先に受け取るかで税務上の結果が変わり得るため、受け取る順番と時期は、退任の何年も前から設計しておくのが理想です。

8. 社長が今からやっておくこと

最後に、経営者として着手すべきことを整理します。

  • 役員退職慰労金規程を整備する:算定方法(功績倍率を含む)を明文化し、根拠を残す。
  • 報酬水準とセットで設計する:引退前の報酬引き下げが、退職金の枠に影響することを踏まえる。
  • 企業型DCで平準化を始める:毎月の損金化と資金負担の平準化を、早い時期から進める。
  • 出口の順序を決めておく:DC一時金と役員退職慰労金の受け取り順・時期を事前に設計する。
  • 併用時は通達9-2-31を確認する:DCの給付を含めた退職給付の全体で、会社からの退職金が過大にならないかを税理士と確認する。
  • 資金繰りを確認する:退任時にどれだけの資金が必要になるかを試算しておく。
  • 税理士と連携する:金額の妥当性判断や出口設計は、個別性が高い領域です。

役員退職金は、経営者人生の集大成として受け取るお金です。だからこそ、退任の直前に慌てて考えるのではなく、何年も前から準備しておくことが結果を大きく変えます。

とくに、企業型DCによる平準化は「早く始めた人ほど有利」な仕組みです。拠出できる期間が長いほど積み上がる額も大きくなり、退任時に会社から出す金額を抑えられます。まだ引退が先だという社長ほど、いま検討する価値があります。

Q

社長の退職金は、いくらまでなら損金になりますか?

A

法律に具体的な金額の上限はありません。業務に従事した期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況などに照らして「不相当に高額」と判断された部分が損金不算入になります。実務では功績倍率法が使われますが、これも法定の基準ではないため、個別に税理士へご確認ください。

Q

功績倍率3.0倍なら、必ず認められますか?

A

認められるとは限りません。民間の実務で3.0倍を用いる例は見られますが、税務上の標準倍率や安全ラインとして定められたものではありません。実際の判定は、同業・同規模の類似法人の支給水準などに照らして行われ、3.0倍で算定した退職金の一部が否認された裁判例もあります。

Q

役員退職金は、いつ損金になりますか?

A

原則として、株主総会の決議等により金額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、実際に支払った日の属する事業年度に損金経理をした場合には、それも認められます。

Q

引退前に役員報酬を下げると、退職金で不利になりますか?

A

功績倍率法をそのまま適用すれば、報酬を大きく下げると算定額も小さくなります。ただし、退職の直前に大幅に引き下げたなど、最終報酬月額が過去の功績を適切に反映していない特殊な事情がある場合には、別の算定方法を検討する余地もあるとされています。報酬の設計と退職金の設計はセットで考えることをおすすめします。

Q

企業型DCの掛金や給付は、役員退職金の功績倍率に影響しますか?

A

企業型DCの事業主掛金そのものは、会社が支給する役員退職給与とは別に、企業型年金規約に基づいて拠出時に損金算入されます。一方、退任時に会社から役員退職給与を受け取るほか、既往における使用人兼務役員としての勤務に応ずる企業型DC等の給付を受ける場合には、法人税基本通達9-2-31により、その給付も勘案して役員退職給与が不相当に高額かどうかを判断することとされています。両方を併用する場合は、退任前に必ず税理士へご確認ください。

Q

役員退職金と企業型DCの一時金を、同じ時期に受け取ってもよいですか?

A

受け取ること自体は可能ですが、退職所得控除の重複調整に注意が必要です。受け取る順番によって確認する期間(前年以前9年か19年か)が変わるため、順序と時期は事前に設計しておくのが安全です。

Q

代表を退いて会長になるときに退職金を出せますか?

A

分掌変更による打切支給という考え方はありますが、実質的に退職したのと同様の事情にあるかが厳しく判断されます。肩書きを変えただけで実際には従来どおり経営に関与している場合、退職給与として認められない可能性があります。実行前に必ず税理士へご相談ください。

Q

退職金の原資はどう準備すればよいですか?

A

内部留保のほか、法人保険や企業型DCなどの方法があります。企業型DCは拠出時に毎月損金となり、退任時に会社から出す現金を抑えられるのが特徴です。それぞれ税務の取り扱いが異なるため、目的に応じて組み合わせるとよいでしょう。

Q

赤字の会社でも役員退職金を支給できますか?

A

支給自体は可能ですが、資金繰りの裏付けが必要です。また、支給によって大きな損金が計上されると、その事業年度の決算内容にも影響します。金融機関からの評価や後継者への引き継ぎも踏まえて、時期と金額を検討してください。

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まとめ|「上限はないが、無制限でもない」を正しく理解する

社長の退職金は、法律に金額の上限規定がない一方、「不相当に高額な部分」は損金になりません。功績倍率法は実務の物差しにすぎず、3.0倍という数字も法定の安全ラインではないという点を、まず正しく理解しておきましょう。

おさえる4点

  • 判定は相対的・総合的:業務従事期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況で判断される。
  • 功績倍率は目安:「3.0倍なら安心」ではない。算定根拠を説明できる状態にしておく。
  • 企業型DCは構造が違う:掛金は法令・規約に基づき拠出の都度、継続的に損金化できる。
  • ただし完全な別枠ではない:一定の場合、DCの給付も勘案して会社の退職金が過大でないか判定される(通達9-2-31)。受け取る順番でも税務の結果が変わる。

役員退職金は個別性が非常に高い領域です。「いくらまでなら大丈夫か」を単独で考えるより、報酬水準・原資の準備方法・受け取りの順序までを一つの設計として捉えることが、結果的に会社と社長自身を守ります。金額の妥当性から出口の順序まで、顧問税理士や専門家と早い段階から相談しながら進めることをおすすめします。

参照した公的情報源

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本記事は、企業型確定拠出年金(企業型DC)に関する一般的な情報提供を目的として作成されています。記載内容は執筆時点の法令・税制に基づくものであり、今後の法改正・制度変更により内容が変わる場合があります。本記事は特定の投資行動・税務処理・法的手続きを推奨するものではなく、個別の状況に応じた専門的アドバイスの提供を目的とするものではありません。実際の導入・運用にあたっては、税理士・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家へのご相談を強くお勧めします。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害・不利益についても、株式会社FGパートナーズは一切の責任を負いません。