企業型DCの加入者数がDBを逆転|中小企業が退職金を見直す理由

企業型DCの加入者数がDBを逆転|中小企業が退職金を見直す理由

「退職金制度は大企業のもの」——長くそう思われてきました。ところが2026年6月公表の統計で、日本の企業年金の主役が静かに入れ替わったことがわかります。

2026年3月末時点で、企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者数は 893万人。確定給付企業年金(DB)の 885万人 を上回りました。DBが本格的に普及して以降、同じ基準の速報値どうしの比較でDC単独がDBを上回ったのは、これが初めてです。

そしてこの逆転を押し上げているのは大企業ではありません。導入する会社の数が急増する一方で、1社あたりの人数は縮んでいます。 企業型DCは中小企業に降りてきました。本記事では、この数字を一次統計から読み解きます。

📋 この記事でわかること

  • 企業型DCの加入者数がDBを上回った事実と、その正確な中身
  • 「人数は逆転したが資産はまだ2.6倍の差」という見落とされがちな前提
  • 1社あたり人数が253人→148人に縮んだ理由と、総合型プランの役割
  • 2026年12月改正の「月6.2万円」が意味するもの(DB併用企業は要注意)
  • DCに寄せる前に会社と社員が引き受けるリスク

1. 2026年3月末、企業型DCの加入者数がDBを上回った

1同じ日に公表された、二つの速報値

2026年6月5日、企業年金に関する二つの統計が同時に公表されました。どちらも令和8年3月末現在の速報値です。

項目企業型DC確定給付企業年金(DB)
加入者数893万人(前年比+31万人・+3.6%)885万人
規約数・受託件数7,586件(前年比+155件・+2.1%)11,513件
資産額27兆8,288億円(前年比+17.5%)71兆7,484億円(前年比+4.2%)

2行目は単純に比較できません。企業型DCの7,586は規約の数で、1つの規約を複数の会社が共有します(実施事業所数は2025年3月末で58,326社)。DBの11,513は3業態の受託件数。会社の数を比べた数字ではありません。

基準日と公表日が揃った速報値どうしなので、時点のずれによる見かけ上の逆転ではありません。ただし集計の土台は同じではなく、DCは記録関連運営管理機関4社の管理データ、DBは3業態の受託契約が基です。厳密に同一の物差しではない点は押さえておいてください。

参照:信託協会・生命保険協会・全国共済農業協同組合連合会「企業年金(確定給付型)の受託概況(令和8年3月末現在)

2「確定給付型ぜんぶ」で見ると、まだわずかに届いていない

逆転したのは DB単独との比較 です。確定給付型には厚生年金基金(4件・加入者11万人)も残っています。

💡 ポイント:- 企業型DC(893万人)は、確定給付企業年金(885万人)を上回った- ただし厚生年金基金を含めた確定給付型の合計(896万人・両制度への重複加入を含む)には、あと3万人ほど届いていない「DCがDBを抜いた」は、DB単独との比較としては正しく、確定給付型全体との比較としてはまだ早い。社内で説明するときは、この線引きを外さないほうが誠実です。

なお896万人は、第1号厚生年金被保険者数(4,285万人・令和7年3月末)から推計すると民間の給与所得者の約21%。裏を返せば、会社員のおよそ8割は確定給付型の企業年金を持っていません。

2. 数字の中身を正しく読む ──「人数は逆転、資産はまだ2.6倍」

加入者数だけで「DCの時代になった」と結論を出すのは早計です。資産額を見ると景色が変わります。

資産額加入者数1人あたり(試算)
確定給付企業年金(DB)71兆7,484億円885万人約811万円
企業型DC27兆8,288億円893万人約312万円

資産の総額ではDBが企業型DCの 約2.6倍。人数はほぼ並んでも、積み上がっているお金の厚みはまるで違います。

ただしこの数字は、そのまま「加入者一人の残高」ではありません。資産額には受給権者や運用指図者の分も含まれる一方、加入者数は現役の加入者だけなので、実際の平均残高よりは高めに出ます。 厚みの差を大づかみに見るための数字として扱ってください。

差の理由は資産の出どころです。制度開始はDCが2001年10月、DBが2002年4月で、歴史そのものはほぼ同じ。違うのは中身で、DBには2012年3月に廃止された適格退職年金や、代行返上した厚生年金基金の積立金が引き継がれています。ゼロから積み上げたDCとは蓄積の前提が違います。

なおDCの資産額が前年比17.5%増と伸びたのは、掛金だけでなく運用環境の影響も受けています。DCの資産額は市場環境で上下する性質のもので、毎年この水準で増える前提にはできません。

「加入者数の逆転」は、これから退職金を積み始める人の入り口がDCに移ったことを示す数字です。「すでに積み上がった退職金の主役がDCになった」という意味ではありません。

3. なぜ逆転したのか ── DBが減り、DCが中小に降りてきた

1DBは受託件数も加入者数も減っている

3業態が受託しているDBの件数は、令和5年3月末11,928件→令和6年11,794件→令和7年11,653件→令和8年11,513件と毎年減り続けています(受託契約ベースの件数で、厚生労働省が集計する制度数とは集計方法が異なります)。

減っているのは器の数だけではありません。DBの加入者数も令和7年3月末の887万人から885万人へ2万人減り、厚生年金基金を含めた合計も899万人から896万人へ減りました。今回の逆転は、DCが増えたことと、DB側が縮んだことの両方で起きています。

背景にあるのは、給付を約束する制度の負担の重さです。運用が予定利率に届かなければ会社が追加拠出で穴を埋めることになり、積立不足が財務に直接跳ね返る仕組みは、経営環境の変化が速い時代には抱えにくくなっています。

2企業型DCは、導入する「会社の数」が爆発的に増えた

ここが本記事の核心です。DCの伸びを加入者数ではなく 実施事業所数 で見ると、違う姿が見えます(厚生労働省掲載の統計より、2025年3月末まで)。

時点加入者数実施事業所数1社あたり人数(試算)
2015年3月末508万人20,097社約253人
2020年3月末725万人36,449社約199人
2025年3月末862万人58,326社約148人

10年間で、加入者数は1.7倍。ところが実施事業所数は2.9倍です。

💡 ポイント:1社あたりの加入者数が253人から148人へ縮んでいる。 新しく導入しているのは大企業ではなく、規模の小さい会社だということです。かつては数百人規模の会社が単独で規約をつくるものでしたが、いまは導入企業の平均像が 150人を切る規模。5人、10人の会社が入っている実態が平均値を押し下げています。

3総合型プランが中小企業の入口になった

規約数と事業所数の比率にも同じ流れが出ています。

時点承認規約数実施事業所数1規約あたり事業所数(試算)
2015年3月末4,579件20,097社約4.4社
2020年3月末6,380件36,449社約5.7社
2025年3月末7,432件58,326社約7.8社

1つの規約を共有する会社の数が4.4社から7.8社へ増えました。統計は内訳を分けていませんが、総合型(複数の事業主が一つの規約に相乗りする形) が広がったことを強く示唆します。中小企業等が共同で実施することに法令上の実施要件はありません(厚生労働省 確定拠出年金Q&A No.7)。単独で規約をつくり厚生局の承認を得るより負担が軽く、この仕組みが事業所数の急増を支えました。

ただし相乗りである以上、制度設計の自由度は下がります。 運用商品のラインナップや掛金の算定ルールは規約で決まっており、自社の都合だけでは変えられません。「安く早く入れる代わりに何を手放すのか」を確認して選んでください。

4. 「今」である理由 ── 2026年12月、拠出限度額が月6.2万円に

潮目が変わったこと自体は行動の理由になりません。いま見直すべき理由は、制度改正に期限があるからです。

2026年12月1日施行 ── 限度額の一本化と引き上げ

2025年6月公布の年金制度改正法により、拠出限度額が見直されます。厚生労働省は第2号加入者のiDeCoの拠出限度額について「勤務先の企業年金の有無等による差異を解消し、企業年金と共通の拠出限度額に一本化したうえで、この共通拠出限度額について、月額6.2万円に引き上げられます」と説明しています。

  • 施行日:2026年12月1日(予定)
  • 変更内容:企業年金とiDeCoに共通の拠出限度額に一本化し、月額6.2万円へ引き上げ(現行は月額5.5万円)
  • 掛金への反映:納付期限は規約で定める日とされ(確定拠出年金法21条)、実務では「当月分を翌月末日まで」が一般的。その場合2026年12月分(納付は2027年1月)から反映される見込みです

💡 ポイント:「6.2万円」は、会社がDCに出せる上限ではありません。 厚生労働省の資料では「iDeCo・企業年金等 合計で 月額6.2万円」とされ、事業主掛金・他制度の掛金相当額・iDeCo(マッチング拠出を含む)の合計に対する上限です。したがってDB併用企業がDCに出せるのは「6.2万円 − 他制度掛金相当額」まで。

DBの給付水準が高いほどDCに残る枠は小さくなり、DB自体に拠出限度額はないためしわ寄せはDC側だけに出ます。一方、中退共・特定退職金共済・法人保険は対象外です。他制度掛金相当額の対象は確定給付企業年金・厚生年金基金・石炭鉱業年金基金・私学共済制度に限られます。自社がどちらかで、使える枠はまったく変わります。

参照:厚生労働省「2025年の制度改正(確定拠出年金)

導入には準備期間がかかる

企業型DCは思い立ってすぐ掛金を出せる制度ではありません。労使合意、規約の作成、運営管理機関の選定、厚生局への手続きが必要で、相応の準備期間が要ります。

  • 改正の恩恵を受けるにはその時点で制度が動いていることが前提です。改正直前は問い合わせが集中し、通常より時間がかかることがあります
  • 既に導入している会社も、規約の記載内容によっては見直しが必要です
  • 2024年12月改正時の経過措置(従前の掛金拠出を認めるもの)には終了事由があります。 厚生労働省の資料では、事業主掛金の額の算定方法など確定拠出年金法3条3項7号の事項を変更する規約変更、DB規約変更による掛金の再計算、DB等の実施・終了などで終了するとされています。掛金設計に手を入れる変更は終了に直結します

5. DCに寄せる前に ── 会社と社員が引き受けることになるもの

統計がDCに向かっているからといって、すべての会社に最適とは限りません。DCはDBの負担を会社から社員へ移す制度でもあります。

1運用のリスクは社員が負う

DBは会社が給付額を約束します。DCが約束するのは拠出額だけで、受け取る額は運用結果によって変わり、元本割れもあり得ます。会社は積立不足のリスクから解放されますが、社員にとっては「いくらもらえるか確定しない制度」への移行です。曖昧にしたまま導入すると後で不信につながります。

2原則60歳まで引き出せない

企業型DCの資産は原則60歳まで引き出せません。住宅取得や教育費でまとまった資金が要っても取り崩せない性質のお金です。

しかも60歳から受け取れるのは通算加入者等期間が10年以上ある場合で、10年未満だと受給開始年齢が繰り下がります(8年以上で61歳、6年以上で62歳、4年以上で63歳、2年以上で64歳、1か月以上2年未満で65歳)。つまり50歳を過ぎて加入した社員は、60歳では受け取れない可能性があります。

ただしこの期間は自社の加入期間だけではなく、前職の企業型DCやiDeCoの加入者期間・運用指図者期間、他制度から移換した資産の算定基礎期間も通算されます。一律に60歳から受け取れるとは限らないところまで説明してください。

3会社には投資教育の努力義務がある

事業主には、加入者への投資教育を導入時だけでなく継続的に行うことが求められます。「制度を入れて終わり」にはできません。 形骸化すると多くが元本確保型に置いたまま放置しがちで、制度を入れた意味が薄れます。

4選択制DCの場合、社会保険料の減少には副作用がある

給与の一部をDC掛金に振り替える「選択制DC」では標準報酬月額が下がり、社会保険料の負担が軽くなります。ただし、これは将来受け取る給付にも影響します。

  • 将来の老齢厚生年金:標準報酬月額が下がると、その期間に対応する年金額も下がります
  • 傷病手当金・出産手当金:標準報酬月額をもとに計算されるため、受給額が下がる可能性があります
  • 遺族厚生年金・障害厚生年金:報酬比例部分をもとに計算されるため、下がった期間の分だけ将来の給付額が下がります
  • 失業給付・育児休業給付:賃金額をもとに計算されるものは、影響を受ける場合があります

社会保険料が下がることだけを説明して導入すると、後で「聞いていない」となります。メリットと副作用を並べたうえで社員自身に選んでもらうのが前提です。

5受け取り方によっては、退職所得控除を使い切れない

DCの一時金に使える退職所得控除の枠は、会社の退職金と共有です。しかも2026年1月1日から調整が厳しくなりました。

国税庁の資料によれば、DCの老齢一時金以外の退職手当等(会社の退職金など)を受け取る年の「前年以前9年内」にDCの老齢一時金を受け取っていた場合、退職所得控除の計算で勤続期間の重複が排除されます。改正前は「前年以前4年内」。令和8年分以後の所得税に適用され、判定対象は2026年1月1日以後に支払を受けたDC老齢一時金に限られます。

  • DCが先・退職金が後:重複を避けようとすると、空ける期間は実質5年から10年に延びました
  • 退職金が先・DCが後:今回の改正の対象外ですが、従来から「前年以前19年内」が対象です。「逆順なら影響がない」のではなく、むしろ遡る期間は長い
  • いずれも「その期間を空けなければ受け取れない」制限ではなく、重複する勤続期間の分だけ控除額が調整される仕組みです

入口だけでなく、受け取る出口の順番と時期まで含めて設計する必要があります。社長自身の退職時期と重なる場合は、顧問税理士と確認してください。

6事務負担とコストはゼロにはならない

掛金の管理、入退社時の手続き、給与計算との連携など、総務・経理には一定の事務が発生します。総合型プランや導入支援で減らせますがゼロにはなりません。 また掛金とは別に、運営管理機関の手数料などのランニングコストが継続的にかかります。掛金の額だけで比較すると会社負担を見誤ります。

7特別法人税は「廃止」ではなく「凍結」されている

企業年金の積立金には、本来、残高に年1.173%の特別法人税が課される仕組みが法律上残っています。平成11年度の税制改正で凍結されて以降、期限つきの延長の繰り返しです。金融庁の令和8年度税制改正要望書には「凍結期間は9回延長。直近では令和5年改正により3年間延長され、令和8年3月末まで課税凍結中」とあり、その後さらに3年延長されて凍結期限は令和11年(2029年)3月末まで。これで10回目です。

つまり、恒久的に廃止されたわけではありません。 いま課税されていないのは確かですが、凍結が解除されれば課税が復活します。20年、30年と積み立てる制度である以上、この論点が残っていることは知っておいてください。

参照:金融庁「令和8年度税制改正要望事項(企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長)

6. 自社の退職金制度をどう点検するか ── 5つの問い

1そもそも退職金制度があるか

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は 74.9%。5年前(80.5%)から低下し、企業規模30〜99人では 70.1%およそ3社に1社に退職金制度がありません。

なお調査対象は常用労働者30人以上の企業で、それより小さい会社は入っていません。 規模が小さいほど保有率が下がる傾向を踏まえると、数人規模の実態はさらに低いはずです。制度がないこと自体は違法ではありませんが、採用の場面では比較されます。

2制度があるなら、その原資はどこにあるか

退職金規程はあるが原資は内部留保から都度支払っている——中小企業でよくある形です。退職者が重なった年に資金繰りが直撃されます。 制度の有無と原資の手当ては別の問題です。

3社長自身の退職金は準備できているか

従業員の制度を整えても、オーナー自身の出口が空白というケースは少なくありません。役員退職金は金額の妥当性や損金算入のルールが従業員とは別に問われます。

注意したいのは、企業型DCが役員退職金と無関係の「別枠」にはならない点です。法人税基本通達9-2-31は、退職役員が会社から退職給与を受けるほか確定拠出年金の企業型年金規約に基づく給付などを受ける場合、その給付額も勘案して退職給与が不相当に高額かどうかを判定するとしています。ただし条文は「既往における使用人兼務役員としての勤務に応ずる」給付という限定を置いており、代表取締役はそもそも使用人兼務役員になれません(法人税法34条6項)。社長本人にこの通達を文言どおり当てはめられるとは限りませんが、過大役員退職給与かどうかは業務従事期間・退職の事情・同種同規模法人の支給状況等による総合判断(法人税法施行令70条2号)なので、DCと役員退職金は通しで見てください。

4既存の制度(DB・中退共・保険)との関係を整理できているか

すでに他の制度で退職金を準備している会社は、入口と出口の二段階で整理を。

  • 枠に影響する制度(入口):確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私学共済制度。実施しているとDCに出せる事業主掛金は「6.2万円 − 他制度掛金相当額」に縮みます(2026年12月以降。現行は5.5万円が起点)
  • 枠に影響しない制度(入口):中退共、特定退職金共済、法人保険。他制度掛金相当額の対象外で、DCの掛金枠を削りません
  • ただし「枠を削らない」=「干渉しない」ではありません(出口):中退共も法人保険も、受け取るときは退職手当等としてDCの老齢一時金と退職所得控除を分け合います(5章[5]の9年・19年ルール)。役員はさらに法人税基本通達9-2-31により、DCの給付額も勘案して役員退職給与の相当性が判定されます

入口で干渉しない中退共や法人保険も、出口では必ず干渉します。「枠を削らないから併用して問題ない」という整理は、社長自身の受け取り方を設計する段階で崩れます。

5社員が「使いたい」と思う設計になっているか

会社が拠出する形と、社員が給与から選ぶ形(選択制)では受け止め方が変わります。全員に一律で強制する設計は、家計事情の異なる社員には合いません。 選べる形にしておくことが、制度を根づかせる条件です。

2026年12月1日の施行に合わせるなら、逆算して動くほかありません。既存導入企業は規約の確認、未導入企業は着手時期を、いま決めてください。

Q

企業型DCの加入者数がDBを上回ったというのは、確定した事実ですか?

A

2026年6月5日公表の令和8年3月末現在の速報値どうしの比較で、企業型DCが893万人、DBが885万人となり、DC単独がDBを上回りました。ただし厚生年金基金(11万人)を含む確定給付型の合計896万人には、まだ届いていません。いずれも速報値で、確報で動く可能性があります。

Q

DCが増えているということは、DBより優れた制度なのですか?

A

優劣ではなく、リスクを誰が負うかの違いです。DBは会社が給付を約束し、運用結果が予定を下回れば会社が補填します。DCは負担が拠出額で確定する代わりに、運用結果は加入者が引き受けます。会社の財務体力や社員構成で適した制度は変わります。

Q

うちは10人未満の会社ですが、企業型DCは導入できますか?

A

実施事業所数の増加と1社あたり人数の縮小から、小規模な会社の導入が進んでいることが読み取れます。総合型なら単独で規約を作るより現実的な負担で導入できるケースがあります。厚生労働省の確定拠出年金Q&Aでも、第一号等厚生年金被保険者が事業主のみである場合の導入は「可能」とされています(No.2)。 ただし、従業員がいる会社で役員だけを加入者にして済ませる組み方は成り立ちません。 第一号等厚生年金被保険者は全員加入が原則で、一定の資格で絞る場合、加入者とならない従業員には「事業主掛金の拠出に代わる相当な措置」が必要です。水準は同Q&Aで「基本的に同額」(No.22)とされています。

Q

退職金制度を作ると、業績が悪化したときに負担になりませんか?

A

制度の選び方で変わります。DBのように給付額を約束する制度は、運用環境によって追加負担が生じ得ます。一方、企業型DCは会社の負担が拠出額で確定するため、想定外の追加負担は生じにくい構造です。 ただし、いったん決めた掛金を下げるのは簡単ではありません。 事業主掛金の額は規約の記載事項なので、減額には労使の合意・規約変更・厚生局への手続きが要ります。退職給付の水準そのものを下げる内容なら、労働条件の不利益変更の問題にもなり得ます。下げにくい前提で、無理のない水準から始めるのが実務的です。

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まとめ|「大企業の制度」という前提が終わった

2026年3月末、企業型DCの加入者数(893万人)が確定給付企業年金(885万人)を上回りました。押さえるべきは次の3点です。

押さえるべき3つのポイント

  • 逆転したのは「人数」であって「資産」ではない:資産額はDBが約2.6倍、1人あたりでは811万円と312万円の差。トレンドと蓄積は分けて見てください。
  • 伸びを支えているのは中小企業:実施事業所数は10年で2.9倍、一方で1社あたり加入者数は253人から148人へ縮小。総合型プランの普及が小さな会社の入口になりました。
  • 2026年12月1日が見直しの区切り:拠出限度額が共通枠に一本化され月6.2万円へ。ただしこれはiDeCoや他制度の掛金相当額を含めた合計の上限で、DB併用企業がDCに出せる額はその分縮みます。

同時に、DCは運用リスクを加入者が引き受け、原則60歳まで引き出せない制度でもあります。メリットと副作用を並べて社員に説明できる状態にすることが、制度を根づかせる出発点です。

「退職金制度は大企業のもの」という前提は、統計の上ではすでに終わりました。次に問われるのは、自社がどの形を選ぶかです。

参照した公的情報源

【免責事項】

本記事は、企業型確定拠出年金(企業型DC)に関する一般的な情報提供を目的として作成されています。記載内容は執筆時点の法令・税制に基づくものであり、今後の法改正・制度変更により内容が変わる場合があります。本記事は特定の投資行動・税務処理・法的手続きを推奨するものではなく、個別の状況に応じた専門的アドバイスの提供を目的とするものではありません。実際の導入・運用にあたっては、税理士・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家へのご相談を強くお勧めします。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害・不利益についても、株式会社FGパートナーズは一切の責任を負いません。